「反保護主義」打ち出せなかったG20閣僚会合に厳しい批判の毎日、日経

◆米中トップ会談次第

 「反保護主義言えぬ無力さ」――。今月8、9両日に福岡市と茨城県つくば市で開かれた20カ国・地域(G20)の二つの閣僚会合に対して、11日付の各紙社説の中で最も論調が厳しかった毎日の見出しである。

 トランプ米大統領は月末のG20首脳会議の後に、中国からの全輸入品に制裁関税を拡大するかを決断すると表明し、中国も報復の構えを見せている。毎日は、「全面戦争の瀬戸際である」中、会合では多くの国から対立を懸念する声が上がったのに、「両会合とも共同声明に保護主義反対を盛り込まなかった」、また「反保護主義はG20の原点」にもかからず、「声明の取りまとめを優先して超大国に配慮し、保護主義に明確な懸念を示せなかったのなら本末転倒だ」と批判した。

 毎日と同様、厳しかったのは日経。同紙は特に財務相・中央銀行総裁会議が世界経済の下振れに懸念を表明しながらも、「具体的な解決策に踏み込めずに終わった」と指摘し、「何より急がねばならないのは貿易戦争の終結だ。にもかかわらず米中摩擦の激化などを放置するのでは、G20の存在意義が問われる」という具合である。

 両紙の指摘や批判は尤(もっと)もで、「G20は貿易戦争の解消に本腰を入れる必要がある」(日経)のは確かだが、独善的あるいは強権的な米中首脳に対し、どう対話を呼び掛けたらいいのか。

 今回、議長国を務める日本に対し、日経は「欧州やカナダ、メキシコなどと連携し、米中の自制を強く働きかけなければならない」としたが、それで何とか収まる状況なのかどうかである。

 この点、産経も「米国の振る舞いはトランプ大統領次第だ。今月末の首脳会議で独善的な行動を自重させて対中共闘を促さなくてはならない」として、「議長国であり、トランプ氏と親密な安倍晋三首相の責務である」と強調する。

 ただ、同紙も常々指摘するように、米中貿易戦争が覇権を懸けた戦いの様相も持っていることを想定すれば、それも現実的にはかなり難しそうである。結局は、米中どちらかが折れるしか解決の道はなく、G20首脳会議での米中トップ会談次第ということか。

◆「質の高い投資」合意

 米中トップ会談が主役とすれば、他はみな脇役ということになるが、脇役なりの責任は果たせたようである。例えば、低所得国が過剰な債務を抱え、財政破綻しないよう配慮した「質の高いインフラ投資」を原則とすることで合意した点である。産経は「巨額で不透明な資金支援で相手国を縛り、影響力を行使する中国に、国際ルールの順守を迫るためにも重要な意味を持つ」と指摘したが、その通りである。こうした評価は産経のみで、他紙に見られなかったのは残念である。

 ただ、「質の高いインフラ投資」の面でも、問題がある。「どこまで実効性を確保できるかだ」(産経)。中国の途上国への融資実態について、産経は「地方政府が実施しており全容がわからないなどと言い訳し、改善を怠ってきた」として「監視の強化を徹底すべきである」と訴えるが、同感である。

 産経がさらに指摘した、中国の国有企業に対する不公正な補助金など、G20として改善を迫るべき構造問題については、読売も言及し「問題が多い」とした。

◆貿易問題避けた朝日

 朝日社説は、GAFAと呼ばれるIT大手への「デジタル課税」について論評し、経済協力開発機構(OECD)が公表している3案を議論の土台に、新ルールへ合意を目指すよう促した。

 東京は貿易・デジタル経済相会合が共同声明で「反保護主義」を打ち出せなかったことを「極めて残念」としながらも、その一方で焦点に浮上しているとして、機能低下が目立つ世界貿易機関(WTO)の改革を取り上げた。朝日、東京とも主役は米中トップ会談ということで貿易摩擦問題は避けたということか。

(床井明男)