数字を水増しして大仰に報じ「民意」を演出する沖縄地元紙のトリック
◆警察発表やめさせる
「詭計(きけい)。奸策(かんさく)。ごまかし。たくらみ」。トリックを広辞苑で引いてみると、こうある。沖縄の地元紙を読んでいると、ついトリックという言葉が浮かんでくる。うっかり真に受けようものなら、その詭計に引っ掛かってしまう。
米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設の是非を問う県民投票で「反対」が7割を占めたことを受け、移設断念を求める県民大会が3月16日に開かれた。参加者は「1万人」(主催者発表)。ところが、本紙によると「実数は3500人」だという(20日付「沖縄のページ」)。どっちなのか。改めて地元紙に掲載された写真を見ると(17日付)、どう数えても数千人規模だ。
主催者はざっと3倍、さばを読んでいる。むろん水増しはどこにでもある。だが、本土では「警察の調べ」が発表され、ほぼ実数が分かる。それが沖縄にはない。かつて沖縄県警も発表していたが、左派勢力が「圧力」をかけ、やめさせた。それをいいことに地元紙は水増し数字を大仰に報道し、「民意」なるものを演出してきた。まさにトリック。
古くからの手法だ。1995年の米兵少女暴行事件に対する抗議大会の主催者発表は8万5000人だが、警察発表は5万8000人。1・5倍の水増しだった。2007年の歴史教科書検定撤回県民大会は主催者発表が11万人だが、警備会社の調べでは2万人弱。水増しは実に5倍以上に膨らんだ。
12年のオスプレイ配備反対県民大会は10万3000人。当時は民主党政権で、藤村修官房長官が会見で、2万5000人と実数をばらしてしまった。県警は参加人数を上部には伝えていたのだ。なぜ県民に発表しないのか、首をひねる。
◆分析はせず実態隠す
地元紙には、隠したつもりでも実数が出てしまうことがある。政府は25日に辺野古の新区画に土砂を投入したが、沖縄タイムス26日付は「米軍キャンプ・シュワブゲート前には約千人(主催者発表)が集まった」とし、「『子孫のために』陸で拳」と反対運動を勇ましく報じた。
ところが、同じ紙面にある「辺野古の動き 25日」と題する時系列の記載には1000人の数字はどこにもない。例えば、5時には「市民約40人」が工事車両を止める行動を開始、9時23分には「市民約300人が『埋め立てやめろ』の声を上げ」、15時2分には「ゲート前テントには土砂投入の知らせ。市民約100人から『えーっ』『埋め立て強行許さないぞ』と怒りの声」などとある。「辺野古の動き」を見る限り、せいぜい300人。こんな具合に地元紙を子細に見てみると、トリックも馬脚を現す。
県民投票の「反対7割」もその類いだ。投票率は52・48%で、半数近くが棄権。反対は71・7%だったが、全有権者の割合では37・6%で、4割にも届かなかった。反対7割といっても有権者の実数でいえば、そんな数字になる。
共同通信社の第三者機関「報道と読者委員会」で弁護士の清水勉氏は「投票率が52・48%は高いと言えるか悩ましい。沖縄でも投票率、賛否の地域差があったはずであり、市町村ごとのデータ分析をすべきだった」と指摘するのは、うべなるかなだ(沖縄タイムス22日付)。分析しなかったのは「反対7割」の実態を隠すためだろう。
◆基地問題は2位転落
県は3年ごとに行っている県民意識調査(18年)の結果を27日に発表した。それによると、重点的に取り組むべき施策は前回(15年)、前々回(12年)とも「米軍基地問題の解決」が1位だったが、今回は2位に転落した。ちなみに1位は「子どもの貧困対策」だった。
これまで地元紙は県民意識調査を大々的に報じ、反米軍基地キャンペーンに使ってきたが、さすがに今回はそうはいかず、沖縄タイムスは28日付の2面に2位転落をこっそりと書いている。
県民はトリックをとっくにお見通しだ。政府はひるまず移設工事を進めるべきだ。
(増 記代司)