照射問題で公開画像分析し韓国側が隠した“何か”に迫った「報プラ」
◆漁船と違う遭難船舶
昨年12月20日に能登半島沖の日本の排他的経済水域(EEZ)内で韓国駆逐艦「広開土大王(クァンゲト・デワン)」から海上自衛隊哨戒機P1が火器管制レーダー照射を受けた問題で、防衛省はP1が記録した電波信号の音を21日に公開し、韓国との実務者協議を打ち切った。
韓国側は「客観的根拠に基づかない」と反論したが、防衛省・自衛隊のホームページに公表された映像や音は、第三者を説得するに十分な内容であるとテレビほかマスコミに登場する専門家が口をそろえている。
第三者に十分な内容ならば、韓国軍も本当のことは分かっているはず。20日放送のフジテレビ「報道プライムサンデー」は「日本のEEZで何を?」と問い、レーダー照射問題の深層に韓国側が隠そうとした何かがあると焦点を当て、日韓双方の公表映像などに有識者が分析を加える興味深い特集をした。
まず、「クァンゲト・デワン艦は、漂流中の遭難船舶に対し、人道主義的な救助作戦を遂行していました」と、韓国国防省が公開した動画から、遭難した「漁船」を分析。近年、漂流する北朝鮮漁船が増えている。しかし、番組が取材した能登半島の漂着船など北朝鮮漁船は小さく粗末なものだ。動画に映る遭難船も大差なく粗末だが、よく見るとやや大きく、地元漁師は「北朝鮮の漁船にしては立派過ぎる」と証言し、棒のような「立ちもの」が並ぶなどの特徴を指摘していた。
◆船の位置で拿捕説も
また、現場海域に韓国海洋警察最大の警備艦「警備救難艦5001」が軍の駆逐艦と共に出動した組み合わせに「違和感がある」(拓殖大学海外事情研究所教授・荒木和博氏)と重大事態がうかがえることや、遭難船の「立ちもの」に長距離連絡ができるAMモールス通信アンテナがあり、「特殊部隊か工作員が乗っていたのではないか」(元防衛省情報分析官・西村金一氏)という見方が示された。
西村氏が推測する「日本には絶対見られたくなかった」ものは、船は沈む状態にないため、燃料切れで漂流していた北朝鮮船に国連経済制裁違反になる燃料補給を韓国側が行ったという“給油説”だ。
別の説を唱えたのは、スタジオ出演した海洋問題に詳しい東海大学教授・山田吉彦氏。韓国海洋警察庁は現在、「文在寅大統領ほぼ直轄」だと指摘し、最大の警備救難艦が軍艦と一体となって来るということは、北朝鮮の要請で「大統領府が動いた」との見方だった。
また、P1が撮影した映像による、それぞれの船の位置、速度から「遭難船」は低速だが動いているので、燃料切れではなく、韓国側は救助ではなくて捕捉態勢を取っていたと説明。つまり拿捕(だほ)または撃沈しようとしていたと、“目からうろこ”の分析を披露した。この場合、重要人物の日本への脱北を阻止するという推測だ。レーダー照射は撃墜一歩手前のプロセスだけに、それに見合う“都合の悪さ”の推理は大胆になる。
いずれにしても、レーダー照射は準戦闘行為であり信頼関係を壊す。EEZの行為の全てが不都合なためか、韓国側は「レーダー照射はしていない」とし、今度は自衛隊機が「低空威嚇飛行をした」と追及してきた。23日には東シナ海で「低空威嚇飛行」と発表し、韓国国防相が「強い対応を取る」と、日本の哨戒機を撃ち落とすことを示唆する発言までし、その後もエスカレートしている。
◆哨戒で国際的協力を
番組では韓国の新国防白書で中国、北朝鮮シフトが指摘されたが、北朝鮮と蜜月にある文在寅政権の反日路線が、次々と形になっていることは遺憾だ。自衛隊の哨戒活動は国連決議の下で北朝鮮船の瀬取りを監視しているが、北が文政権に影響を与え韓国軍を用いて日本の哨戒機を追い払っているとすら考えられる。
しかし、選挙で選ばれた韓国の政権が外交・安保をどうするかは主権国家の自己責任。むしろ、長期にわたり38度線で共産主義の防波堤となった韓国と日米安保条約のお陰で憲法9条を改正することもなく平和を享受できたわが国が、情勢の変化に当惑していまいか。自由主義陣営の不沈艦として、主要各国と哨戒活動の国際協力をさらに強化するなど、道を切り開いていくべきだ。
(窪田伸雄)