読み応えあった週刊朝日の「新天皇の7つの壁」岩井・保阪両氏の対談

◆「深謀遠慮」のご発言

 今年は御(み)代替わりを迎える。それに関連して週刊誌でも平成の時代を振り返り、新しい時代の天皇制や皇室について取り上げる企画が目に付くようになってきた。

 週刊新潮(1月17日号)と週刊朝日(1月18日号)が特集を組んでいる。新潮は「『御代替わり』7つの謎」に迫っているのに対して、朝日は元朝日新聞編集委員で「宮内庁取材の第一人者」岩井克己氏とノンフィクション作家の保阪正康氏による対談「新天皇の7つの壁」を載せた。

 新潮は「『元号』」誕生の舞台裏」「両陛下の『お引越し』ロードマップ」「『ミッチー・ロス』で後追い辞職者が続出か」などとまるでテレビのワイドショーのような切り口で、見出し以上の内容はない。準備はしているのだろうが、今後重厚な企画が出てくることを期待したい。

 これに比べて週刊朝日の対談は読み応えがあった。真っ先に取り上げられているのが「大嘗祭の国費負担」について秋篠宮殿下が言及されたことである。これには「深謀遠慮」があったと岩井氏は指摘する。

 皇室には国費ではなく内廷費からの支出を支持する意見もあり、それを「記録にとどめておこう、という意味の発信だった」と岩井氏は解釈している。「早々と『前例踏襲』の方針を固めていた官邸」と「皇室との『平行線』を印象づけたのだと思います」とやんわり官邸批判をしているのが朝日らしい。

◆新たな皇后像模索も

 続いて取り上げたのが、天皇陛下が誕生日の会見で、「平成が戦争のない時代として終わろうとしていることに、心から安堵しています」と発言されたことだ。「戦後生まれの人々にもこのこと(戦争の犠牲と戦後の国民の努力)を正しく伝えていくことが大切」と述べられている。

 これについて、保阪氏は「自分でつくってきた天皇像への自負が込められており、歴史的な透視力のあるプロパガンダだと理解」できたという。やや深読みし過ぎてはいないか。陛下は、戦争の犠牲と教訓により戦後平和が保たれたこと、そしてそれに「安堵」されこと、国民の努力によって繁栄を築けたことを「正しく伝えていく」ことを率直に述べられた、と、そのままに解釈すればいいのではないだろうか。

 御代替わりで国民がもっとも心配しているのは「皇后」のことだろう。「雅子さまはどうなるのか」(保阪氏)だ。岩井氏の説明では公務でも雅子殿下の出席はこれまで「年間を通じて秋篠宮ご夫妻の半分ぐらい」「祭祀に至っては、長期療養に入ってからの15年間で皇太子妃の出番は300回くらいあったはずですが、出席はわずか2回」という。

 これでは「皇后は出ないが、皇嗣妃の紀子さまは出るという、深刻な問題が起きかねない」とし、「東宮の機能不全が続いている現状について国民の理解を得ないままごまかして、代替わりへと進めば、平成はじめの皇室バッシングのような批判が再び噴出しないとも限らない」と危惧する。

 ならばどうしたらいいのか。岩井氏は「皇后はあまり表には出ないというパターンをつくるならつくるで、はっきりさせることが重要だと思う」とし、保阪氏も「そんな時代になるのかもしれませんね」と応じている。

◆新天皇に「肉声」期待

 両陛下の姿勢が立派だっただけに、新天皇皇后を見る国民の目はどうしてもそれとの比較になってしまうのは避けられない。

 その新天皇に対しても2人は注文を付けている。岩井氏は、「戦争の歴史感覚が風化していく時代になっていくなかで、59歳で天皇に即位する皇太子さまに、昭和史について、祖父の昭和天皇と今上天皇の歩みについて、どう踏まえてきているのかを尋ねてみたい」と問い掛けた。

 保阪氏は皇太子の「会話がどこかよそ行きなようにも感じます」とし、岩井氏も「ご自分の『肉声』がまだ十分に聞こえてきたという気がしない」「ぜひご自身のことばで、語っていただきたい」と述べている。

 今上天皇は昭和天皇が負ってこられた歴史の重みを真正面から受け止めてこられた。新天皇はそれらの歴史をどう引き継いでいくのか。岩井氏、保阪氏の物言いは厳しいが、われわれもお聞きしたい内容である。

(岩崎 哲)