大阪万博決定でまず総花的なテーマの中身の明確化を求めた読、朝、産経

◆経済牽引の役割期待

 「これまでの常識を打ち破る、世界の課題解決を実現させる万博にしたい」(松井一郎大阪府知事)。

 パリで23日に開かれた博覧会国際事務局(BIE)の総会で、2025年国際博覧会(万博)の開催地が大阪に決まった。加盟国による投票の結果、大阪誘致を掲げた日本がロシア(エカテリンブルク)、アゼルバイジャン(バクー)に競り勝ったのである(決選投票で日本92票、ロシア61票)。

 日本での大規模万博の開催は1970年の大阪、2005年の愛知に続いて3度目となる。55年ぶり2度目となる大阪万博の開催テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。大阪湾に浮かぶ面積155ヘクタールの人工島・夢洲(ゆめしま)を会場に、25年5月3日から11月3日の日程で開く。会期中の来場者は2800万人、経済効果の規模は2兆円に上ると見込まれている。

 大阪万博決定に関係者は歓喜し、松井府知事は冒頭のように意気込む。安倍晋三首相は「日本の魅力を世界に発信する絶好の機会」だとして「大阪・関西の皆さまをはじめ、オールジャパンの体制で、全力で取り組んでいく」決意をコメントした。地盤沈下が言われて久しい関西・大阪の活性化だけでなく、2020年東京五輪・パラリンピック後の日本経済の牽引(けんいん)役としての期待も大きく膨らむ一方、その前に克服しなければならない難題も横たわる。

◆前回と違う時代背景

 各紙が25日に一斉に掲げた論調(社説、主張)などの指摘には汲(く)むべき点が少なくない。まずは大成功した前回と今回との日本を取り巻く時代背景の大きな違いについてだ。「高度成長から人口減と高齢化へ、日本の状況が大きく変わるなかでの開催」(朝日)。「当時とは異なり、展示型のイベントは一般に集客力が低下している。若い世代のクリエーターなどのアイデアを積極的に取り入れ、未来の技術やそれがもたらす新たな暮らしを国民が幅広く考える契機に」(日経)というのだ。前回はアポロ12号が持ち帰った目玉の「月の石」が人気を呼んだが「通信機器の画面をなぞれば世界をあらかた知ることのできる時代に、人の好奇心をくすぐる次の一手とは何か」(産経抄)が難題。そこで「本当に魅力ある万博にするために、よほど知恵を絞らなければならない」(産経)。「万博を成功させるため、国を挙げて知恵を出し合」(同)うことが求められる。

 今回の決定は「健康や持続可能な社会システムをコンセプトに、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)などを駆使して、未来への提案を世界に発信しようとのコンテンツが評価された」のに、「実際は経済効果ばかり追い求めるようでは理念から外れる」(毎日)との耳の痛い批判にも心すべきだ。「かつての万博は、最新の科学技術や工業製品を世界に発信した。現在は地球規模のテーマに取り組む『課題解決型』が理念として決められている」(同)。「現在は地球温暖化や、人口増加と食料争奪など、世界が困難な問題に直面している。そんな難問にどんな解決案を示せるかも、来る万博の大きな課題」(産経)なのである。

◆開催費用など課題も

 今回の万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」だが、府がつくった当初のテーマは「人類の健康・長寿への挑戦」だった。これが「落語や漫才の笑いの文化は健康によい、などと、こじつけめいた内容もあった」(産経)として政府の有識者検討会で今のテーマに変更された。このため、今のテーマは「総花的で」「いろんな解釈を許し、しまりのない万博にもなりかねない」(産経)との危惧も出ている。朝日も「関西の産学が築いてきた生命科学の蓄積を生かし、急速な少子高齢化に直面する日本から社会課題の解決策を発信する。そう説明されるが、中身はぼやけたままだ」と指摘し、経済波及効果ばかりが言われることへの懸念には留意すべきだろう。開催費用の調達をはじめ会場隣接地へのカジノを含む統合型リゾート誘致の問題など課題は少なくないが、何よりもまず「開催の意義を明確に示し、機運を盛り上げることが大切」(読売)だとしたのは妥当である。

(堀本和博)