護憲派は3割にすぎぬことを図らずも浮き彫りにした朝日世論調査
◆改憲反対をむき出し
先週の憲法記念日に合わせて朝日が2日付で自社の世論調査結果を報じた。
1面トップには「安倍政権で改憲、反対58% 9条首相案、反対53%」と、反対の文字が並んでいる。紙面をめくると3面は「政策優先度、憲法改正は最下位 憲法論議『高まってない』71%」、6・7面は見開きで「安保、『非軍事重視』が大勢」「9条首相案、支持広がらず」と畳み掛ける反改憲紙面だ。3日付社説は調査結果も使って「改憲を語る資格あるのか」と安倍首相をなじっている。
そこまで言うのだから、どんな世論調査なのか、見開き面に掲載されていた「質問と回答」の一覧に目を通してみた。すると、幾つもの疑問が浮かんできた。「憲法改正は最下位」だったという質問と回答を見ると、こうある。
「次の政治課題の中で、安倍首相に優先的に取り組んでほしいものに、いくつでもマルをつけてください。
景気・雇用60▽高齢者向けの社会保障56▽教育・子育て支援50▽財政再建38▽震災復興34▽原子力発電・エネルギー16▽外交23▽安全保障32▽憲法改正11」(数字は%)
朝日が提示した政治課題は九つあり、てっきり回答の多い順に並べてあると思った。景気・雇用60から原子力発電・エネルギー16までが多い順だったからだ。ところが、その後に外交23、安全保障32と数字が逆転している。つまり多い順でなく、朝日の記載順だった。他の複数回答の結果もそうなっている。
◆記載順で下位に誘導
何のことはない、朝日は外交・安保・憲法を記載の後の方に回し、とりわけ憲法改正を最後に置いていたのだ。おまけに質問も変だ。「優先的に取り組んでほしいもの」としながら、「いくつでもマルをつけてください」と言っている。優先は「他に先んじて取り扱うさま」(広辞苑)の意味だから本来、幾つも選んではならないはずだ。「それをいくつでも」とは矛盾している。
恐らく回答者は九つの最初の方で「優先」を次々と選んだので、後のマルを躊躇(ちゅうちょ)したのではないか。むろん、全ての政治課題をじっくり見てから回答する人もいるだろうが、多くの場合、さっさと答えていく。実際、最初の四つで200%を超えており、1人が既に二つにマルを付けた勘定だ。これでは後になるほど減るのは当たり前だ。
それでも外交、安保で盛り返したが、最後の改憲は「もうイイや」になった? こんな仕組みで朝日は「憲法改正は最下位」に誘導したのだろうか。少なくとも記載順では最初から「憲法改正は最下位」と位置付けられていた。
「9条首相案、反対53%」はどうか。反対と答えた人にその理由を尋ねており、3択が用意されていた(やまかっこ内の数字は全体に対する比率)。
「自衛隊を憲法に明記することで、自衛隊の海外活動が拡大するおそれがあるから59〈31〉▽政府はこれまでも自衛隊は合憲としており、変える必要がないから30〈16〉▽戦力の不保持をうたった2項を削除するべきだから7〈4〉」
2項削除の回答者は明らかに強固な改憲派だ。仮に首相案が発議されれば、段階的改憲を受け入れ賛成する可能性がある。自衛隊を合憲とする人も憲法学者のように9条を文字通り解釈する、こてこての自衛隊違憲論者ではない。この人たちも首相案が国民投票で否定されれば自衛隊合憲の根拠を失いかねないと、賛成に転じる可能性が高いのではないか。こうして見ると、朝日の「首相案、反対53%」の中身も怪しくなってくる。
◆調査の“禁じ手”多用
では「改憲反対58%」はどうか。これも疑わしい。それでもう一度、紙面に目を通すと、改憲を発議するとしたら、いつごろ行われるのがよいかとの質問があった。
その回答は「年内11▽2019年から2020年の間21▽2021年以降26▽そもそも発議する必要はない30」(数字は%)とあった。何のことはない、そもそも発議する必要はないとする護憲派は3割にすぎなかった。
世論調査の“禁じ手”は回答の誘導だ。ところが朝日調査には誘導が多いと、かねて指摘されてきた。その朝日調査の巧妙な誘導をもってしても護憲派は3割だ。このことを浮き彫りにした今回の調査は褒められるべきか。
(増 記代司)