「子供貧困」の原因である「家庭崩壊」を「差別」にすり替える左派メディア

◆婚外子率が高い沖縄

 「差別」。何かにつけてメディアに登場するフレーズだ。昨今は保守、革新を問わず「LGBT(性的少数者)差別」がトレンドとなっている。だが、この「差別」なるものの怪しさは本欄15日付「左翼に利用されるLGBTブームの『不都合な真実』を暴露した新潮」(森田清策氏)で改めて知れる。

 人権やジェンダーフリーといったイデオロギー的目的のために「差別」をつくり出し、これを政治利用するという、いつもの反権力構図だ。これは「沖縄差別」にも当てはまっている。

 山形大学の准教授が2年前に沖縄県内の18歳未満の子供がいる世帯の子供貧困率を調べ、全国平均の2倍以上、断トツの全国最悪だと発表した。すると、沖縄紙は「子供貧困」キャンペーンを貼り、「(貧困の)背景には沖縄戦と27年間の米統治、過重な基地負担がある」とし、安倍政権による沖縄へのネグレクト(虐待)とまで言った(沖縄タイムス2016年1月7日付1面コラム「大弦小弦」)。

 それで筆者は沖縄紙の記事を調べてみたが、取り上げていたのはいずれも親の不倫やDV(家庭内暴力)、養育放棄など夫婦・親子関係が壊れてしまった家庭の子供たちだった。つまり家庭崩壊が子供貧困の原因で、沖縄戦も米軍基地も関係なかった。

 沖縄では全出生数に占める10代の出産割合が全国平均の2倍、婚外子も全国平均のほぼ2倍で、その母親の3人に1人は生活力の乏しい少女(19歳以下)だ。その上、離婚率は全国1位。これでは子供貧困率が全国の2倍以上になるのは当たり前の話だ。ところが、沖縄紙はこれに触れず、家族崩壊を「沖縄差別」にすり替えていた。

◆人種差別とは無関係

 どうやら「黒人差別」にもすり替えが行われているようだ。去る4日、米国の公民権運動の黒人指導者、マーチン・ルーサー・キング牧師が凶弾に倒れて50年を迎えた。暗殺現場となったテネシー州メンフィスでは追悼集会が開かれ、朝日は「キング牧師の夢、遠い現実 居住地・貧困…根強い人種差別」、毎日は「キング師の夢半ば 分断残る米社会」などと「黒人差別」を盛んに報じた(6日付)。

 テレビでは白人警官による黒人暴行シーンなどが繰り返し放映され、人種差別がトランプ政権下で一層、深刻になっている。新聞やテレビの報道を真に受ければ、そう受け取れる。だが、本当にトランプ政権のせいで黒人差別が深刻化し、格差が広がっているのか。

 これに対してウォルター・ウィリアムズ米ジョージ・メイソン大学特別教授は本紙12日付インタビューで、黒人の立場からこうした見方に真っ向から異議を唱え、「黒人が今日抱える問題は公民権の問題とは関係がない」と断じ、黒人自身の責任であるとの見方を示している。

 「黒人が直面する問題の一つは、婚外子率の高さだ。黒人の子供の75%が婚外子として生まれている。これは人種差別によって引き起こされたものではない。また、(黒人が多く住む)一部の都市では、凶悪犯罪率が高い。シカゴでは昨年、600人以上が殺された。だが、これも人種差別とは無関係だ。なぜなら、そのほとんどが黒人が黒人を殺害した事件だからだ」
 黒人の子供の75%が婚外子というのは驚きの数字だ。婚外子の全てとは言わないが、多くの場合、精神的にも経済的にも家庭は安定せず、そのしわ寄せは子供たちが背負う。それが進学率の低さや犯罪率の高さに表れる。

◆怪しげな差別が闊歩

 沖縄の子供貧困が「沖縄差別」ではなく、家庭崩壊が原因であったように、黒人の直面する問題も黒人差別ではなく、家庭崩壊にあった。この指摘は興味深い。

 それを黒人差別と言い募るのは米国の左派メディアや人権運動家などのリベラル勢力にほかならない。ウィリアムズ教授は初の黒人大統領となったオバマ前政権時代に国民の間の人種的関係は逆に悪化したと批判し、トランプ大統領を人種差別主義者とする見方に反対する。これも朝毎など左派メディアとは真逆だ。

 こんなふうに「差別」報道は国の内外を問わず、怪しげなものが多い。イデオロギー的につくられた「差別」を左派メディアが闊歩(かっぽ)させているのだ。

(増 記代司)