太陽黒点数減少から予測される地球寒冷化に警鐘鳴らす産経コラム

◆覆されたエネ予測

 年末に「予測」について考えてみる。この時期、来年はこうなる、といった予測がメディアをにぎわせている。だが、予測の根拠とされる要因が変化すれば、逆の結果がもたらされる。つまり予測は外れる。

 今年の政治で言えば、「小池旋風」。一時、安倍政権の存続を危ぶませたが、一挙にしぼんだ。人の心変わりは読みづらい。では、科学の粋を集めた予測はどうなのか。こちらもいささか心もとない。

 国際政治学者のジョセフ・ナイ氏(元ハーバード大学ケネディスクール学長)は読売23日付「地球を読む」で、米国家情報会議が2008年の報告書「世界潮流2025」で示した主な予測の一つにエネルギー獲得競争激化があったが、米国の「シェール革命」で予測が外れたと論じている。

 当時、中国のエネルギー需要が増加し、それまで低めで比較的安定していた原油価格は1バレル当たり100ドル以上に急騰。専門家は石油埋蔵量が「限界」に達し枯渇していく「ピークオイル」論を唱え、エネルギー獲得競争が激化すると予測した。

 米国も輸入エネルギーへの依存度が高まるとされ、価格の高騰と相まって米国の地政学的な影響力の大きな足枷(あしかせ)になり、「米国衰退」論に拍車を掛けた。だが、「シェール革命」がこの予測を覆した。

 米国内で採掘可能なシェールガスの量は膨大で、他の資源との組み合わせで、あと2世紀は持つと見積もられた。米国はエネルギー輸入国から輸出国に転じ、石油をめぐるパワーゲームの主導権を握った。その影響は米国民の心理面にも及び、米国の持つソフトパワーの魅力をも増進。ナイ氏は「新たに豊富なエネルギーを獲得したことで米国のパワーは増大する」との見解を支持している。トランプ米大統領の強気の背景が知れる。

◆「不都合な真実」指摘

 こういう予測外れに接すると、気になるのが地球温暖化だ。この予測も08年当時に世界を席巻したばかりか、今も世界政治を左右している。

 ここ40年、地球が温暖化してきたのは事実だ。二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出量が急増し、国際社会は「京都議定書」「パリ協定」を結んで排出量削減に取り組み、温暖化を防ごうとしている。本紙の日曜版「サンデー世界日報」(24・31日号)が伝えるように温暖化で「北極海の氷が消える」事態もあり得るからだ。

 こうした予測に対して産経の長辻象平・論説委員は17日付コラム「日曜に書く」で、「この寒い冬の『不都合な真実』」を突き付けている。不都合な真実とは、温暖化ではなく地球が寒冷化に向かっているとの見解だ。

 それによると、太陽の活動の指標となる黒点の観測には400年の歴史があり、過去に黒点が減った1645年からの70年間や1800年前後の30年間は寒冷だった。1970年代にも黒点数が減ったが、76年から96年の20年間、黒点数が復活し温暖化が問題にされた。20世紀後半に地球の気温は上昇したが、黒点数でみた太陽活動も1600年以降で最高だった。

 ところがその後、黒点数が減り、太陽の活動は大きく下がり続け、200年ぶりの寒冷期再来を予告している。「普通に考えれば、ただごとでない。太陽科学者たちは警鐘を鳴らしているが、その声は政策決定者に届かない」と長辻氏は嘆息している。

◆国際情勢も予測困難

 「世界の気象学者らは、こぞってCO2の増加だけに注目した。こうして太陽関与説は、懐疑派学説の烙印(らくいん)を押されることになったのだ。正しい地動説が迫害された科学の暗黒時代を連想してしまう」

 とすれば、トランプ氏の「パリ協定」離脱も無謀とは言えなくなる。気象変動だけでなく国際情勢の予測の難しさを改めて思い知らされる。

 今年の冬、日本列島は猛烈な寒さに包まれている。その予兆は夏の東日本の長雨。10月の東京都心では60年ぶりに12月中旬並みの寒さに。11月には札幌市で最高気温が0度を下回る「真冬日」。これは105年ぶりの異変。長辻氏はこれらが寒冷化の兆しとみている。

 というわけで年末から正月の気象が気掛かりだ。いやいや、そんな目先の話ではなく、来年は長期的かつ真実を見極める目で物事を捉えたい。

(増 記代司)