都議選を共産党の描く構図で「非自民総力戦」と分析した朝日コラム

◆民協路線堅持求める

 今年1月、共産党は第27回党大会を開き、従来の「自共対決時代」という位置付けを捨て、「自公と補完勢力」対「野党と市民の共闘」という新しい対決構図を描いた。この話を思い出したのは、朝日が共産党の描く対決構図に従って論評しているように思えてならないからだ。

 例えば-。世論調査部長の前田直人氏は17日付のコラム「政治断簡」で「新党と既成政党の連係プレー」と題し、都議選結果について「『都民ファーストの会』を率いた小池百合子・東京都知事はなぜ、ここまで自民をたたきのめすことができたのか。単に『都民ファが大勝したから』ではない。開票結果をよくみれば、もっと多様な『非自民総力戦』のカラクリが浮かび上がってくる」とし、次のように分析している。

 7つある3人区では3位以内に当選できるのに、自民は次々と圏外にはじき出され、6選挙区で議席ゼロ。想定外の大惨敗に結び付いたが、「自民をふるい落とした主役は、都民ファではない。多くの予想を覆して議席を増やした共産である。五つの3人区で、自民との最後の1議席争いを制した」とし、こう言った。

 「都民ファーストはトップを独走してもらう。都民ファを信用できない人の政権批判票は共産や民進、ネットがとり、自民を落とせばいい」と言う、あうんの呼吸が生んだ新党と既成政党の連係プレーで自民を惨敗させた。「個々には仲の悪い非自民勢力をいずれも排除しない姿勢が民意と共鳴し、思わぬ結果を生んだのかもしれない。…ほどよい受け皿があれば自民に対抗できることを、都議選は証明した」

 だから「野党第1党が内輪もめをしている場合ではない。民意と向き合い、大局を見すえて行動するときだ」と、民進党に民共路線の堅持を求めている。

◆都民フと公明が主役

 それにしても世論調査部長とは思えない的外れで独り合点な分析だ。自民が負けた3人区の6選挙区は、いずれもトップ当選が都民ファで、2番手が公明だった。目黒区では都民ファの得票率は約42%を占め、同区や北区では両党合わせると60%近くに達した。

 都議選前の事前予測は「小池系VS自民 幕開け」(日経6月24日付)というものだったが、結果もそれを裏付けた。朝日の出口調査(3日付)によれば、自民支持層の4分の1が都民ファや公明に流れ、自民票は剥がされていった。

 それが一定の固定票を持つ共産に有利に働き、3議席目に入った。結果的には競り勝ったが、これは漁夫の利と言うべきものだ。自民をふるい落とした主役は、あくまでも都民ファと公明だった。

 つまり、都民ファに独走してもらい自民を追い落とすという「あうんの呼吸」や「非自民総力戦」を描いていたのは共産党の支持者だけだ。前田氏が「新党と既成政党の連係プレー」とするは共産党の考えを反映したものだ。

 野党第1党が内輪もめをしている場合ではないとし「大局を見すえて行動するときだ」とする「大局」もまた、共産党の描く「野党と市民の共闘」そのものだ。それが前田氏の都議選分析の本当の「カラクリ」だ。

◆反原発だけを俎上に

 朝日の13日付社説「民進党 勘違いしていませんか」もそうした論調に従っている。蓮舫代表の二重国籍問題を問う同党議員に対して「的外れな議員たちの言動」と批判するが、政権獲得を目指す政党のトップに二重国籍疑惑があれば、受け皿として躊躇(ちゅうちょ)する人は少なくないだろう。疑問の解消は公人の責任だ。それを批判する朝日こそ、勘違いしている。

 朝日社説は「政党にとって何よりも大事な政策の軸が、定まらないことが大きい」とも言う。これには異論はないが、奇異なことに朝日は「象徴的なのは原発政策だ」と反原発だけを俎上(そじょう)に載せ、「なし崩しの原発回帰を進める安倍政権に対し、民進党が脱原発依存の旗を高く掲げれば、鮮明な対立軸を示せるはずだ」と、あくまでも安倍政権との対立構図を描いてみせる。

 民進党に問われている政策の軸は憲法や安保などの基本政策のはずだが、朝日にとってそれはどうでもいいことのようだ。やはり共産党の代弁者と言うほかあるまい。

(増 記代司)