日米首脳会談/安全保障面の合意を高く評価した産経、読売、小紙
◆先行き警戒する朝毎
ハグ・握手19秒、大統領専用機「エアフォースワン」に同乗、別荘中庭の円卓での夕食会――。トランプ米大統領が安倍首相を異例の厚遇で迎え、行われた11日(米国時間10日)の日米首脳会談は、安全保障で日米同盟重視を再確認し、経済関係では両国ナンバー2らによる分野横断的な経済対話の創設で合意した共同声明で、日米蜜月時代を印象付けた。予測不能なトランプ氏の出方に不安のあった会談だが、まずは安堵していい滑り出しであった。
新聞論調(小紙14日付、他各紙12日付)も日米共同声明について概(おおむ)ね肯定的な評価である。読売は冒頭で「初の首脳会談としては上々の滑り出し」と書き、産経は「両国はもとより、アジア太平洋地域や世界の平和と繁栄に寄与する合意として評価したい」と歓迎。小紙は「初会談としては上出来だと言える。首相はトランプ氏との信頼関係構築に成功した」と論じた。
やや慎重な言い回しで評価したのは朝日、毎日、日経の3紙だ。「ここまで世界に注目された日米首脳会談は、おそらく例がないだろう」ともったいぶった書き出しの朝日は「トランプ氏と、経済や安全保障政策をめぐり一定の合意が得られた。そのことは、日本にとっては安心材料とは言えるだろう」と評価。「両国関係は順調に滑り出したように見える」とした毎日は、首相訪米の主目的が日米関係の重要性の再確認にあったとした上で「その意味で、共同声明は日本側にとっておおむね満足いく内容となった」とそれぞれ限定的な評価にとどめて論じた。社説見出し「『蜜月』演出が覆う危うさ」(朝日)、「厚遇の次に待つものは」(毎日)が示唆するように、それぞれ日米関係の先行きを懐疑、警戒する本音を含むからである。
◆意義のある共同声明
もっとも、読売も「貿易については日米で同床異夢の面もある」ことを認めている。だが、それを含んだ上で、読売や産経、小紙は首脳会談での安全保障面の合意を高く評価した。沖縄県・尖閣諸島に日米安保条約第5条が適用され、米軍の「核および通常戦力の双方」を用いること、中国を念頭に、東・南シナ海での航行の自由や国際法による海洋秩序の維持などが共同声明に明記された。これらの内容を閣僚だけでなく、トランプ氏本人が認めたことの意義は実に大きい。
日米同盟の防衛協力を強化し、実効性を高めることが「独善的な海洋進出を加速させる中国や、核・ミサイル開発を進める北朝鮮への最大の抑止力となる」(読売)、「軍事力の行使をためらわない中国や北朝鮮を抑止する効果的なメッセージとなる」(産経)からである。
さらに、読売は日米の緊密な同盟アピール効果に言及し、政治、経済両面での強固な連携が地域の安定に寄与することを次のように指摘する。「両首脳の親密な関係は、両国間で意見の相違があっても、双方が歩み寄り、生産的な結論を見いだす機運となる効果があろう」。多くの国が懸念をもつ型破りなトランプ外交に対し「日本は良き友人として、国際協調の重要性を粘り強く説き、適切な助言ができる関係を目指す」ようポジティブな期待を込めた。
◆率直な議論を求める
一方、日経の評価は「(安倍首相が)個人的な信頼関係の構築を目指したのは妥当な判断」とした上で「これで一件落着したわけではない。首脳同士の信頼関係を上手にいかし、冷静な協議を進め」ることを求めた。麻生太郎副総理とペンス副大統領らによる経済協議の枠組みに言及し、具体的に日本の自動車メーカーの米国での雇用や生産拡大を迫られても「不合理な要求には毅然と反論」するよう求めた。
またTPP(環太平洋経済連携協定)の必要性をなお粘り強く説明していくと同時に「アジア太平洋地域全体の自由貿易圏をつくる構想の一里塚となるのであれば、日米FTAの可能性を最初から拒む必要はない」などとあらゆる方策を率直に柔軟に議論すべきだと指摘。安全保障関係についての言及は数行で、具体的な経済関係に紙数の大半を費やして論じたのは、いかにも経済の日経の面目躍如と言っていい。
(堀本和博)