俳優・高畑裕太の逮捕・釈放の裏側にある事情を書き切れない各誌
◆無罪を主張も示談に
先週もまた、数々の記事が週刊誌をにぎわした。歌舞伎役者の不倫、豊洲市場移転をめぐる「利権」のうわさ(以上週刊文春)、小池百合子東京都知事側近の“スキャンダル”(週刊新潮)等々、話題があり過ぎるのも食傷気味だ。
その中で多くの読者が「あれ?」と思ったのは強姦(ごうかん)致傷容疑で逮捕されていた「俳優・高畑裕太」の突然の釈放だろう。それまでテレビや週刊誌で、彼の早期釈放や不起訴の可能性を指摘したところはほぼ皆無だったのに、示談成立、即釈放だ。この急転直下は何だ。キツネにつままれた感じである。
週刊新潮(9月22日付)は「誰も解説しない『高畑裕太』釈放から読み取れること」を載せた。
「元東京高検検事の川口克巳弁護士」は同誌に対して、「被害者のケガの程度が軽微だったと聞くので、検察は“致傷”の事実に固執せず、単なる強姦での起訴を考えた可能性がある」と解説した。さらに、被害者が告訴を取り下げ、示談まで成立していては、検察は公判を維持できないと判断し、起訴断念したということである。
ただ、釈放時に高畑側の弁護士が「声明文」を出し、「裁判になっていれば、無罪を主張したと思われる」などと主張した。無罪だったら、なぜ「冤罪(えんざい)だ」として戦わないのか、なぜ示談したのかの説明が付かない。
「フラクタル法律事務所の田村勇人弁護士」は、「無罪主張と示談は相反するものです。冤罪と考えているなら、そもそも示談するべきではない」と指摘している。
◆異例の「声明文」発表
それでは同誌が「読み取った」もの何か。「高額の示談金」だ。この流れを見れば、専門家でなくとも「カネを積んだのだろう」と勘繰ることはできる。「彼のような有名人になると2000万円は下らないと思います」と田村弁護士は同誌に語っている。
一方、週刊文春(9月22日号)は、「高畑裕太『冤罪声明』を仕掛けた親バカ女優」の記事で、このおかしな高畑側の「声明文」について、こう解説する。
「危機管理に詳しい長谷川裕雅弁護士」によれば、「示談後に当事者がこの類の声明文を出すのは異例です。示談の際には通常『本件に関わる一切の事実を口外しない』という秘密保持条項を取り決めます」とし、なのに声明を出したのは、「奇異な示談内容なのでしょうか」と疑問符を付けた。
高畑裕太が釈放された時、前橋警察署の前で報道陣を睨(にら)みつけていた。そこには「悔しさ」がにじみ出ていたが、これは「奇異な示談内容」に関係しているとみえる。思い返せば、記者会見で高畑淳子が、「被害者と言われる女性」と言ったことにも引っ掛かりがあった。
◆精いっぱいの抵抗か
その辺りを露骨に書いたのが、フライデー(9月30日・10月7日号)だ。事件を警察に通報したのは被害者女性ではなく、彼女の「知人男性」だった。当初から「この男性は何者か」と疑問に思っていたが続報がなかった。
裕太の知人「Y氏」が同誌に語ったところによれば、裕太が警察に連行される前に、ホテルでプロデューサーらを前に「大変なことをしてくれたな」と罵声を浴びせていた「強面(こわもて)の男」で、「とてもカタギの人間には見えなかった」という。
「金融機関のデータベースでは暴力団関係者と認定されていた」この男性が示談交渉を取り仕切って「大きな役割を果たした」と同誌は書く。
週刊文春は、「声明にある高畑さん側の主張が事実であれば、美人局(つつもたせ)の被害にあったようなものです」と「刑事事件に詳しい弁護士」に語らせているが、弁護士の名前を伏せたのは、同誌が最も主張したい点だからか。
各誌とも「高額示談金」「美人局」「暴力団関係者」がこの事件の背後にあることをにおわせているが、決定的なことは書いていない。裕太の睨みも淳子の物言いも、それを口にできない無念さの現れか。「裁判になれば無罪を主張した」という「声明文」が精いっぱいの抵抗なのだろう。
芸能人2世のコントロールできない性欲の代償としては高くついた授業料だが、今後の芸能界復帰は不透明で、捨て金になるかもしれない。「親バカ女優」が次にどんな手を打って来るかに、少し、関心がある。(敬称略)
(岩崎 哲)