三菱自の日産傘下入りで不正繰り返す体質の改善を厳しく問う各紙
◆信用失墜し電撃提携
まさに急転直下の電撃発表であった。軽自動車の燃費試験データの不正で、国土交通省に報告書の再提出を求められ、不正のさらなる広がりを明らかにした三菱自(11日)。その三菱自に、顧客への補償の拡大、販売不振などから経営への打撃がより深刻になると予想される中、翌12日の資本業務提携である。
驚きなのはまず、提携の相手が日産であったこと。ご承知の通り、日産は今回の燃費不正事件で三菱自が対象車種を提供し、迷惑を掛けている会社である。
次に、救いの手が以前のリコール隠し問題時のように三菱グループからではなく、グループ外の日産が第三者割当増資を引き受ける形で筆頭株主になり、その傘下で経営立て直しに当たることになったことである。
さて、この電撃提携劇に対し各紙はどう論評したか。社説の見出しを記すと、「信用の失墜が招いた再編劇」(読売13日付)、「『外部の目』で解明を」(朝日)、「日産傘下で体質改善を」(毎日)、「疑惑残した再生あり得ぬ」(産経)、「三菱自動車は日産傘下で再生するのか」(日経)、「三菱自、疑惑も解明を」(東京)、「再建には不正解明が不可欠だ」(本紙14日付)である。
各紙とも厳しい論調である。「事実上の救済劇は、信用を失い、消費者に見放された企業が単独で生き残れないことを、端的に示している」「三菱自は不正を繰り返した原因を徹底して洗い出し、その根を絶たねばならない」(読売)、「何よりも企業体質を根本から見直さなくてはいけない」(毎日)、「この企業体質を抜本的に改革し、顧客の信頼を取り戻さなければ、再生への道など開きようがない」(産経)といった具合である。
◆冷静に再編評す日経
そんな中、今回の提携もよくある企業再編劇の一つと見ているのか、淡々と冷静に論評したのが、経済紙の日経。
他紙が前述のように厳しい論調を示す中で、日経は「日産との提携を機に、閉鎖的で不正を繰り返す体質から三菱自が脱却し、健全な会社に生まれ変わるのか注目したい」というスタンスである。
もちろん、他紙と同様に「まずは燃費不正の全容解明と消費者などへの補償を急ぎ、再発防止に万全を期さないといけない」と厳しい指摘はする。が、その一方で、「軽自動車を通じて提携関係にあり、首脳同士も互いによく知る日産が再建スポンサーに名乗りを上げたことは、三菱自にとって得がたい機会だ」と冷静に評価するのである。
一方、日産サイドから「提携解消の見方もあったが、国内外をにらんで軽の技術を取り込み、規模拡大も図るうえで、関係強化に踏み込む利点は大きいと判断したようだ」と分析したのは毎日。
トヨタも軽を販売する国内市場で、日産が軽を扱わない選択はあり得ない。将来的に需要が伸びるアジアなど新興国市場でも、軽の技術は戦力だ、というわけである。
今回の軽をめぐる燃費不正の背景について、日経は「ライバル各社に対する技術面の劣後がある」と指摘する。世界の自動車産業が環境対応や自動運転技術の進化で変革期を迎えているからで、東京も「技術革新には巨額の研究開発費や設備投資が必要で、この面でも三菱自は追い詰められていた」と分析する。
そうした面では、日経が記す「技術開発でも日産から支援をもらい、意識や風土の改革をはかりたい」との益子修三菱自会長の表明内容は、実現する可能性は十分にあろう。
ただ、その一方で、毎日が懸念するように、「三菱自の今後は不透明で日産の足かせになる恐れもある」ことも否定できない。
◆覚悟を問われた日産
不正問題発覚後、日産ブランドを含む軽4車種の販売は激減。国交省から報告を求められるたびに不正の対象が広がり、底が見えない状態である。その後、三菱自の幹部が燃費試験データの取得を任された子会社に都合の良い数値を取るよう指示していたことが分かり、不正の全容解明はやっと緒に就いた感じである。
「新たに筆頭株主となる日産の責任も重い」(読売)のは確か。各紙とも、日産がどこまで三菱自の信頼回復と経営の立て直しにリードできるか、責任と覚悟を問う形で社説を締めた。
(床井明男)





