憲法9条で議員の激論自体に改正が必要と見えたプライムニュース

◆反改憲基調の民進党

 憲法記念日、3日夜のBSフジ「プライムニュース」は、護憲派、改憲派各集会の報道後、ゲスト出演した下村博文自民党副幹事長、辻元清美民進党役員室長、國重徹公明党憲法調査会事務局次長、宮本徹共産党政策委員会副責任者ら4人の衆院議員が憲法をテーマに議論した。

 タイトルは「与野党論客と憲法の軸 選挙で問われるのは何」で、4夜連続の特集「今こそ憲法を考える」の2日目。各氏は自民の「改憲」、民進の(改憲は)「今は必要なし」、公明の「加憲」、共産の「現状維持」という立場をそれぞれ説明し、丁々発止の論戦となった。

 だが、護憲派集会(5・3憲法集会)で民進、共産、社民、生活の各党首が憲法改正に反対を訴え、改憲派集会(公開憲法フォーラム)で安倍晋三首相が「憲法に指一本触れてはならないといった思考停止に陥ってはならない」など改正の必要を説くビデオメッセージのニュースが示した与野党対立の通り、スタジオの議論も主張のぶつかり合いだった。

 変化は、やはり民進党が民主党時代の「創憲」から「今は必要なし」と事実上の反改憲基調になったことだ。論客として出て来たのも故土井たか子氏(元社会党委員長)に師事した元社民党の辻元氏である。司会の反町理氏が改憲派集会に民進党の松原仁氏が出席したことを問うと、辻元氏は「民進党の中の松原仁さんの立場は自民党で言えば村上誠一郎さんに似ている」と自民党で安保法制に反対した村上氏に例えた。党の方針と違う改憲派は異端分子扱いということか。

 さすがに下村氏が、「それは松原さん個人の話ではない。民進党で憲法改正に同調している人は1人2人のレベルではない」と突っ込んだ。

◆筋の通った改憲理由

 「創憲」を掲げた経緯から民進党には改憲派の勢力が存在する。政権獲得以前の民主党時代の代表に改憲派の鳩山由紀夫氏、前原誠司氏がおり、「創憲」を掲げたのは菅直人氏だ。また、同じ頃の小沢一郎氏の自由党は当時の自民党より改憲に積極的で、手始めとして改憲手続きの国民投票法制定を提唱、自民党内の改憲論議を刺激した。

 そのような民主党と自由党の合併によって集票ウィングを広げたが、今や共産党と一緒に憲法改正反対を叫ぶのは、政権時代の分裂以上のお粗末さだ。民進党の左傾化は著しく、保守系の居場所は狭くなったと見え、大型連休中も4月末に樽床伸二元総務相が離党した。

 議論は9条と自衛隊、安保法制、緊急事態条項が主だったが、下村氏による自民党改憲案の説明、辻元氏による同案批判の応酬で進み、國重氏、宮本氏が補足的に党の立場を主張する格好となった。

 このうち下村氏は同日午前に訪れた高校生の集会のエピソードを紹介。政府の9条解釈を説明して自衛隊は違憲か合憲かを問うたら、「60人ぐらいいた高校生の3割ぐらいが違憲、7割は合憲。政府の解釈について国民的コンセンサスが得られている」と述べた。さらに、続けて下村氏は「憲法は基本法だから誰が読んでもそのように読める憲法改正を目指す必要があると思う」と改正の意義を訴えた。筋の通った話である。

 一方、「国民の側から憲法のここを変えてくれと出たら皆で話をすればいい」「法律で対応すればいい。法律で対応できなければ憲法を変える」との考えを述べる辻元氏の立場からは、自衛隊の定着で国民の改憲要求はなく「今は必要なし」と見えるようだ。

 この点は、長期政権下で自衛隊を野党の違憲・撤廃論から擁護し抜いた自民党にとってもジレンマとなる。集団的自衛権を一部容認した政府解釈による安保法に、野党は自民党政権下で編み出された以前の解釈で批判した。同番組でも安保法制をめぐっては昨年来の激論を繰り返すものとなり、司会・反町氏は「こういう議論を解決するための(自民党)改正案ではないのか」と問い掛けた。

◆違憲論拠の解消必要

 下村氏は解釈しないで済む条文に改める必要を述べたが、辻元氏は改正した条文にさらに自民党は解釈を加え「徴兵制」や「イラク戦争」のような戦争をすると批判。下村氏は歯止めの改憲代案を促したが、「必要ない」の立場から出るはずもない。安保法反対と同様で「暴走」を印象付け、それを「選挙で問われるもの」にしたいのだ。

 共産党の「現状維持」にしても一時的であり、自衛隊違憲・撤廃を諦めたわけではない。この点を等閑視してはならないだろう。学術界では違憲論が有力だ。共産党が民進党と共闘する選挙では「自衛隊違憲・撤廃」の論拠解消の必要を問うべきだ。

(窪田伸雄)