水産資源存続に対する危機感の高まりを、日本のせいにするアエラ
◆「判決」の内容を誤解
アエラ1月18日号の「捕鯨再開でマグロ漁に飛び火? マグロが食卓から消える」は、今日、水産資源の持続的可能性を目指す国際社会の中で、「日本に対する海外の眼差しが年々厳しさを増している」という内容だが、ずいぶん偏った主張だし、誤りもある。
まず、一昨年3月、オーストラリアの提訴に対し、国際司法裁判所(ICJ)が、日本に調査捕鯨の中止を求めた判決について、記事では「(判決)の趣旨は『日本の調査捕鯨は科学的な研究に該当しない』。つまり調査捕鯨の名目で捕獲された鯨を、副産物として加工、販売することで利益を得る事実上の『商業捕鯨』ではないのかという疑念が国際社会にはあるのだ。」とある。
しかし裁判所が「科学的な研究に該当しない」と認定したのは、捕獲のサンプル数が少なすぎて、調査捕鯨に値しない(つまり科学的調査に該当しない)ということであって、商業捕鯨をやっているという非難ではない。記事の指摘は間違いだ。
しかも裁判所はこの時、「鯨類捕獲調査の副産物である鯨肉の販売及びその収得金の活用を伴う調査は、その点のみをもって違法とはならない」とコメントしている。
また記事では、国際社会の風当たりが厳しくなっているとして、「拍車をかけたのが昨年末に突如、再開が発表された南極海における調査捕鯨だ」とある。
昨年12月1日、南極海に向けて船団が下関港から出発したことに対し、先日、米国、オーストラリア、ニュージーランド、オランダが反対する共同声明を出したからそのことを指しているのだろう。
しかしオーストラリアなどは、調査捕鯨をやめさせるのが国策だから、反対表明は既定路線だ。決して軽視できないが、それをもって、「海外の眼差しが…厳しさを増している」と言い立てるのは筋違いだ。
国際捕鯨委員会(IWC)加盟国88カ国のうち、39カ国は鯨類の持続可能な利用を支持する国だ。世界中の国々がそろって捕鯨に反対しているかのような理解は間違いだ。
むしろ日本は、鯨類資源の持続的利用という国際社会の共通目的に利するためにも、「調査捕鯨」を進めていく必要があることを、事あるごとに強く主張することが重要だ。
◆国際的枠組みで管理
さらに、記事では、太平洋クロマグロについて、「大手水産会社が、日本の排他的経済水域(EEZ)内で行っている大型巻き網漁船による乱獲」が最大の問題としている。「魚体の大小にかかわらず、1回の操業で1千匹(およそ50トン)ものマグロを一網打尽にする」「抱卵したマグロの親魚を取ることで、マグロ資源の持続性が危ぶまれている」というが、これも一方的な主張だ。
クロマグロの管理法については、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)や大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)などの国際機関があり、その委員会でしょっちゅう議論されるようになった。その中の一つに、記事のような論議もあるが、これらの国際機関の判断を踏まえて、わが国の現行のマグロ管理が進んでいることは言うまでもない。海には無論、境界がなく、その資源管理を一国だけの視点で担うことはできない。そのために国際的な枠組みでの資源管理が必須になっているのだ。
サンマ、アカイカの資源などについても、北太平洋漁業委員会(NPFC)という国際組織が作られ、その管理について議論されている。NPFCの事務局は日本にあり、その真価が問われる。
沿岸の資源管理については国や都道府県が作成する「資源管理指針」に沿い、関係漁業者が「資源管理計画」を作成、実施している。この計画の中に、どういう魚種を対象にするか、漁業法についてはどうか、あるいは対象海域はどうかを決めて実施している。
絶滅のおそれがある野生生物としての取り扱いなどもあり、今後はわが国が積極的にイニシアチブをとっていく必要がある。
◆海外漁船乱獲が問題
一方、今まであまり問題にならなかったカツオ、サバの管理が国際問題になってきた。従来、国内資源として管理してきたサバやサンマが、台湾や中国の漁船によって乱獲され、昨年は記録的な不漁だった。国際的枠組みの視点から見ても、水産資源利用の持続性を乱す行為であり、これこそ大きな非難に値する。
(片上晴彦)