安保法反対のデモと国会に新春「群衆」特集から分析すべきサンモニ

◆誤報の東京記者登壇

 安全保障関連法が成立(19日未明)した翌日20日の報道番組は、参院特別委・本会議の与野党攻防やデモを振り返る映像を繰り返した。安保法に批判的な番組作りをしてきたTBS「サンデーモーニング」は、同法成立に厳しいコメントが大半だ。この日は同法に反対する新聞の社論を主張する場かと思わせた。

 東京新聞論説兼編集委員・半田滋氏が、「アメリカの戦争」と板書しながら「戦争に巻き込まれる危険が高まった」と説けば、毎日新聞特別編集委員の岸井成格氏が、「この法律は日本防衛のためじゃない。集団的自衛権も、出て行く自衛隊の武力行使も全部他国のためなんですよ。あるいは紛争解決のためなんですよ」と加勢する。

 だが、集団的自衛権の一部行使は「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、我が国の存立が脅かされ、国民の生命・自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危機がある事態」(存立危機事態)が前提であり、「我が国」のため判断されるが、そこまで「他国のため」と言い切ってよいものか。

 番組で「自衛隊に詳しい」と紹介された半田氏は、ある誤報で知られる。「自衛官自殺率の虚偽」と題した本紙「オピニオン」欄(7・24)でも田村重信氏が、東京新聞(6・25)の「おわびと訂正」を以下のように引用して触れている。

 「――2012年(平成24年)9月27日朝刊1面に掲載した『イラク帰還隊員25人自殺』の記事について、(略)記事中の『イラク特措法で派遣され、帰国後に自殺した隊員を十万人あたりに置き換えると陸自は三四五・五人で自衛隊全体の十倍、空自は一六六・七人で五倍になる。』『一般公務員の一・五倍とただでさえ自殺者が多い自衛隊にあっても極めて高率だ。』の二カ所を削除します。さらに『自衛隊全体の自殺者数を押し上げている。』とあるのを『自衛隊全体の自殺者数を押し上げている可能性がある。』と訂正し、おわびします。――

 東京新聞は、編集委員の半田滋氏の署名入りの間違い記事を3年間そのままにしてきた」

 「削除」訂正は重大で不名誉なことだが、安保法批判のためならお構いなしに呼んだと見える。

◆群衆化した国会議員

 また、番組では学生や若い女性のデモ参加を評価していたが、実際には機動隊員を殴る、警官を突き飛ばすなどしたデモ参加者が連日何人も逮捕されている。しかし、同番組に限らずテレビは政治に無関心だった人ばかり取り上げていた。

 国会前のデモに、同番組で思い出されるのは1月4日放送の「新春スペシャル“群衆”と戦後70年」だ。総選挙圧勝後の安倍政権にナチスの群衆操作を示唆する“意地悪”を発揮したものだが、この中で、群衆は①感染する②過激に走りやすい③衝動的である④暗示にかかりやすい⑤時に高い徳性を示す⑥国民も群衆化する⑦反復・断言に弱い⑧同一化する⑨服従する――と、心理学者ギュスターヴ・ル・ボンの「群集心理」から群衆の特徴を類別していた。奇遇にも今回の騒動で群集心理が働いた。

 デモ参加者は⑤を当てはめたいだろうが、法案を「戦争法案」とレッテル貼りし「絶対反対」「戦争に巻き込まれる」「子どもを殺させるな」などと叫ぶ断言・反復、戦後70年に重なる過去の戦争・徴兵制の暗示、「アベ政治を許すな」と悪役仕立てのこれまた断言・反復、首相への衝動的な暴言、逮捕に至る過激な行動、さらに一緒にデモに参加した野党議員にも感染し、ついに国会議員が同一化―、という分析もあり得よう。

◆議事妨害の弊害説け

 多数決の前に、少数野党が群衆を力に議事妨害を正当化した結果、議論が成り立たない腕力勝負の騒然とした採決となった。同番組などテレビ報道の影響も大きいはずで、「特別委の採決は無効だ」(岸井氏)と断言し、与党に責任を擦(なす)り付けるのはおこがましい。デモの声援を受けた議事妨害の弊害も説くべきだ。

 騒乱の特別委採決をめぐっては、20日のフジテレビ「新報道2001」で、自民党政調会長の稲田朋美氏が民主党代表代行の蓮舫氏に対し、「動画で世界中に配信されている」民主党男性議員の自民党女性議員に対する暴力的な引きずり倒し行為を追及した。

 蓮舫氏は「泥仕合になる」と応酬し、激しい党派対立の前には日頃の女性への暴力撲滅の主張も普遍的とならない。ネットで動画を見れば“主戦場”の委員長席から離れた議場後ろの男性も群衆化したようで衝動的だ。今後の国会が心配である。

(窪田伸雄)