AIIBに注文を付けながら日本に参加を促す毎日に欠ける説得力

◆読・産・毎とも懸念

 中国財政省によると、同国の主導で年内に設立するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に対し、57カ国の参加が決まり、創設メンバーが確定した(15日)。3月末の期限前に駆け込み申請が相次いだため、日本と米国が最大出資国であるアジア開発銀行(ADB)の67カ国・地域に迫る規模である。

 AIIBは国際金融機関として、主にアジアの途上国に対しインフラ整備資金を融資するが、中国は最大50%を出資する意向を表明。資金力に期待する途上国だけでなく、自国の企業や金融機関の関連ビジネスへの参入を狙う英国、ドイツ、フランスなど欧州の先進国も参加。一方、日本や米国は運営方法や融資の審査体制などに不透明な点が多いとして参加を見送った。

 本部は北京に置き、初代総裁にはADB副総裁を務めた元中国財政次官が有力視されるなど、中国が運営に強い影響力を持つのは必至とみられている。

 各紙社説での論評だが、これまでに掲載は3紙のみ。掲載順に並べると、次の通り。17日付産経「惑わず冷静な対応を貫け」、18日付毎日「信頼を得られる機関に」、19日付読売「運営の透明性が確保できるか」――。

 前述の通り、中国の強い影響力が予想される中、AIIBに対する注文、懸念は3紙ともほぼ同じだが、今回、参加を見送った日本の姿勢について、産経と読売が「参加を焦る必要はない」としたのに対し、毎日は「参加が必要だ」として対応が分かれた。

◆慎重論を説く読・産

 毎日が日本の参加を説くのは、AIIBが「ADBなどとの協調を進めていくうえでも…必要」というのである。

 アジアにはインフラ投資に膨大な資金需要があり、「AIIBの設立をもってしても、インフラ投資のための巨額な資金ニーズを満たすことは困難」「ADBなど既存の国際機関と協調し、潤沢な民間資金も取り込みながら、地域の経済発展につながるプロジェクトを推進していくことが望ましい」からという。

 だから、英国やドイツなど「加盟する他の主要7カ国(G7)メンバーとも連携しながら、早期参加の環境を整えてほしい」と要望するのだが、今一つ、説得力に欠ける。

 これに対し、産経や読売は「中国による恣意(しい)的運営への懸念が消えぬ中で参加を焦れば、禍根を残す恐れが強い」(産経)などと明快である。

 両紙がそう見る理由の一つは、中国が台湾を創設メンバーから外したことである。

 台湾はアジア太平洋経済協力会議(APEC)と同様、他の創設メンバーと対等の扱いを求めていたが、台湾を自国領土の一部とみなす中国は認めなかった。両紙が「組織運営に政治問題を反映させる姿勢で、国際金融機関としての中立性を保てるのか疑問だ」(産経)、「AIIBを恣意的に運営しようとしている証左ではないか」(読売)と懸念するのも道理である。

 また、両紙はAIIBの理事会についても疑念を挟む。読売は、理事を中国は本部を置く北京に常駐させず、電子メールによる連絡などで理事会を運営する方向で検討しているという、とした上で、「これでは、組織運営や融資案件の選定に関し、加盟国の意見は十分に反映できまい」と断じる。産経も、各国代表による理事会を設けても「非常設にとどまり、中国の融資判断を追認するようでは意味がない」と指摘するのである。

 産経はさらに、「問題は参加するメリットだ」と強調する。ADBが融資する事業の入札でさえ、日本企業の落札割合は0・5%にすぎない。「安値で攻める中国企業が恣意的に受注されやすいAIIBでは、なおさら期待できない」というわけである。

◆理想論に留まる毎日

 こうした毎日と産経、読売の違いはなぜか。確かに毎日も、産経、読売と同様、中国が強い影響力を握ることへの警戒が根強いことを認めるのだが、同紙が強調するのは「何のための、誰のための銀行か、加盟国が明確な共通認識を持つことが最も重要だ」「インフラ整備を通じてアジアにどう貢献するのか、機関の理念が問われており、その理念を担保する組織体制やルールでなければならない」ということで、理想論にとどまっているのである。産経、読売と比べると、現実の厳しさが見えていない、認識の甘さが目立つ。

(床井明男)