現実的な電源比率を求めた日経、産経、小紙と原発ゼロありきの朝、毎

◆最適な電源構成議論

 エネルギーのベストミックス(最適な電源構成)についての議論が、政府(経済産業省)の有識者会議「長期エネルギー需給見通し小委員会」で始まった。2030年の時点で、火力や原子力、水力や太陽光発電などの再生可能エネルギーなどを電源別にどんな比率で組み合わせて使うのがいいのかを検討するのである。

 議論は、原発の比率をどうするのかが焦点。「福島第1原発事故前に約3割を占めていた原発の発電比率をどこまで引き下げるかが焦点」(産経5日主張)、「原発への依存度が最大の焦点」(毎日7日社説)である。

 東日本大震災から4年。原発事故の影響で国内の原発はいま全て停止状態。事故前には原発で約3割、火力で約6割、水力を含む再生エネで約1割を賄っていた日本の電力は、火力発電が全体の約9割を占める火力頼りとなっている。

 このため、天然ガスなどの輸入増で燃料費が増加し、電気料金が2,3割上昇し、家計や企業に負担増を強いている。エネルギー自給率も事故前の19・9%から6・3%に低下し、主要国で最低水準となった。こうした状況に問題認識を持ち、改善を促したのは日経(16日社説)、産経、小紙(8日社説)である。

 まず、現状を「いびつな状況」と批判した日経社説を注目したい。原発の電源比率だけに関心が向きがちな中で、「再生エネルギーの導入目標を明確に」せよともう一つの論点でも議論の深化を求めたことである。再生エネルギーは12年に電力会社による買い取り制度がスタートし、導入拡大に弾みがついたが、このまま増え続けると、家庭の電気料金への上乗せ額はいまの月225円から4倍に膨らむ。この問題点を指摘し「制度見直しで国民負担を減らし、持続性のある目標を定める」ことを説いた。

◆産経は原発25%主張

 これらを踏まえたうえで日経は「安全性や経済性、環境など多面的な観点から、エネルギー供給のあり方を見直すことが欠かせない」「エネルギーを安価に安定供給できるよう、現実を見据えた電源比率の目標を決めるときだ」と、現実的な電源比率の改善を求めたのである。

 「電力の安定供給を第1に考えるべき」だとし「(エネルギー)自給率を高めるような電源構成の策定」を求めた小紙は、原子力関連の技術や人材の維持には、電源比率2割程度が必要と指摘。「運転を20年延長できる制度の適用や、建設中の中国電力島根原発3号機、電源開発大間原発の稼働が欠かせない」ことを主張した。

 産経は「エネルギー安保の観点からも(電源比率の)改善が急務だ」と主張し、原発比率について具体的な目安を示した。現行法の原則40年の原発運用期間の厳格適用で、30年時点で比率が15%程度(48基から18基)に下がるが、新増設や建て替えを考慮しないこの比率では、将来的に原発ゼロになる恐れがあることを指摘。そのうえで「日本が今後も原発技術を維持し、安全性の高い原発を開発するためには、新増設や高経年原発の運転延長などを視野に入れて25%を目指すべきだ」と踏み込み、最も明確な主張を示したのである。

◆代替案示さぬ朝、毎

 一方、朝日(8日社説)と毎日(7日社説)は、あくまで「原発ゼロ」の主張である。日経などが指摘した電気料金値上がりやエネルギー自給率の問題などの問題は「深刻な問題」(朝日)、「いずれもないがしろにできない問題」(毎日)と一応の認識を示した。

 そのうえで朝日は、日本がすでに現時点で「原発ゼロ」状態にあると指摘。この間、節電の定着や省エネ化などで昨夏を乗り切り、今冬も大きな問題が生じていないことを強調して次のように主張する。

 「地震国の日本で原発に頼る危うさを考えれば、できるだけ早く原発をゼロにする必要がある。2030年にゼロにすることを目標にしてもいいはずだ」と。

 「民主党政権は『反原発』の風潮に流され、代替電源を示さないままで『原発ゼロ』を決めた」(産経)が、朝日の主張にも説得力ある代替電源は示されていない。空論という他ない。

 代替電源については「省エネや再生エネの検討を優先すべきだ」という毎日も、進歩がない。この4年間、再生エネルギーの比率は約1割から微増しただけの現実をどう評価するのだろうか。

(堀本和博)