朝日「吉田証言」虚報の国際的悪影響、済州島まで追跡した「新報道」

◆目に余る「慰安婦像」

 朝日新聞が30年来仕掛けた「従軍慰安婦」報道に虚偽があったと、同紙5、6日付の検証記事で認めた。核心は済州島で戦時中に「慰安婦狩り」があったとする吉田清治氏(故人)の証言、軍需工場で勤労奉仕した女子挺身(ていしん)隊と慰安婦の混同などだ。10日朝の報道番組ではフジテレビ「新報道2001」がこの問題を「記事撤回まで32年…追跡!朝日報道と損ねた国益」と題して特集していた。

 テレビの強みだが、一連の朝日の誤報紙面の数々、吉田氏の証言録画、日韓首脳会談や国連など国際社会への悪影響がビジュアルに展開され、深刻さを感じさせられる。

 スタジオでは、1982年9月2日付「朝鮮の女性私も連行」「暴行加え無理やり」の見出しの紙面から始まる問題の朝日記事が掲示され、長年にわたり何度も取り上げたと分かる。続いて「先週ニューヨークに現れた血まみれの少女の像」というナレーションで、縛られた血みどろの従軍慰安婦像を複数映したが、「慰安婦=性奴隷」とする目に余る悪影響だ。

 番組は虚偽証言の主である吉田氏インタビューの録画を紹介した。「公式には朝鮮人徴用と言っていましたが、業務上私たち担当官は『朝鮮人狩り』と呼んでいました」(83年放送)、「村中の女たちが大声を出す。叫ぶ。それに対し私の部下たちは棍棒(こんぼう)、木剣をふるって、あまりしつこく朝鮮人巡査が困っているところを見ると、すぐ行って2、3人その女たちを木剣で殴る……」(90年放送)。これが血まみれの慰安婦像のモチーフになったのだろう。

 こうなると、ニセ証言をした吉田氏はいったい何者だったのか真相を知りたいところだ。番組はそこまで踏み込まなかったが、労働者徴用の「担当官」という役職も本当か疑わしい。朝日新聞自らも真相究明すべきだ。

◆韓国でテレビが再現

 朝日報道で深刻なのは取り返しがつかないことだ。スタジオ出演した京都大学大学院教授の小倉紀蔵氏は、「90年代の初めに韓国にいたとき、まさにこの問題がおきた。テレビが連日のように、いわゆる再現フィルムというのをやるわけですよ。それが吉田証言にもとづいて、奴隷狩りのような、いたいけな少女が『お父さん、お母さん、いやだー』というのを日本の軍人がリヤカーに積み込む。そういうのを連日のように見させられたらどうなりますか」と述べ、イメージの問題を取り上げた。

 虚偽を事実として韓国のテレビがセンセーショナルに再現映像を繰り返し、「強制連行」のイメージが擦り込まれ、定説化して若い世代の反日感情を増幅した。が、番組では吉田証言の「朝鮮人狩り」現場とされる済州島を取材し、むしろ日本統治時代を知る地元高齢者は、誰もが同証言を否定していた。

 討論は、小倉氏の他に大阪から生中継出演した大阪市長・日本維新の会代表の橋下徹氏、韓国人の東海大学准教授・金慶珠氏、自民党総裁特別補佐の萩生田光一氏、共産党副委員長の小池晃氏、中央大学法科大学大学院教授の野村修也氏らで行われたが、存在感を発揮したのは橋下氏。「大ばかさ加減を露呈した」と朝日を斬って捨てる一方で、同検証記事をもって「日本は悪いことはしていないと言い始めるかも分からない。これは間違っている」と保守派に釘を刺した。

 橋下氏は、当時を「道義的に」反省し慰安婦だった女性に謝罪することを強調。また、戦地における女性の問題は世界各国も同様に反省と謝罪をする必要があるとし、「日本だけがレイプ国家と非難を受けること」には異を唱えるべきであるとした。軍の関与があろうと民間であろうと戦地の女性の人権問題は各国すべてが反省しなければならないという。

◆ニセ証言で世論操作

 ただ、橋下氏に代表される道議上の謝罪も、今となっては容易に韓国側に通じない。誤報が32年も続くうちに韓国社会では不可逆的なところまで世論が過熱し、その間、左翼政権10年を経て社会は左傾化、慰安婦問題で憲法裁判決まで出て政権の対日姿勢が硬化した。当面は冷却期間が必要であり、その間に「道義的謝罪」に理解を示す韓国側のパートナーを探し、さらにそのような政権が来るまで待つしかない。

 80年代、90年代に日韓双方の保守政権同士が安保・経済上の国益から日韓外交を重視していたところへ、ニセ証言の報道で韓国民衆の反日民族感情を焚(た)き付け、法的解決を求める強硬論を巻き起こし、関係悪化をもたらしたことは陰謀めいている。朝日は極めて悪辣(あくらつ)な情報操作を行ったのである。

(窪田伸雄)