中国のTPP申請で左派系紙でも厳しい論調の毎日、東京、大甘の朝日

習近平 国家主席(中華人民共和国)

理念共有程遠い中国

 環太平洋連携協定(TPP)に中国が16日、台湾が22日に加入を申請した。各紙はそろって社説で論調を掲載したが、左派系紙でも毎日、東京が中国の申請に対し厳しい見方をする中、朝日の異常な甘さが目立った。

 社説の掲載状況を見ると、まず中国の申請に対し、18日付で読売と日経、20日付で毎日と産経、21日付で本紙が、いずれも見出しで「加盟承認へのハードルは高い」(読売)、「中国のTPP申請は本気か」(日経)などと厳しい論調を示す中、朝日は台湾が申請した翌日の23日付で「ルール順守の見極めを」を掲載した。

 台湾の申請では25日付で読売と産経、27日付で本紙が「ルールに沿って検討したい」(読売)、「日本は全面的な後押しを」(産経)などとその意義を認め、文字通り、日本が後押しするよう求めた。

 また中国、台湾の両方の申請をまとめる形で日経、東京が25日付、毎日が27日付で掲載。日経、毎日は「原則重視で議論を」(日経)と中立的な立場での議論を求めたが、ここでも毎日は、中国に対し厳しい論調を載せた。

 毎日は、加入の是非は参加を希望する国や地域にルールを順守させ、高い水準の自由化を維持できるかという観点から公正に判断されるべきだと指摘した後で、「中国が自由で透明性の高い市場経済の理念を共有するのであれば、排除すべきではあるまい」とするが、「ただし、現状は程遠い」と強調した。

 「市場経済化の進展を期待されて世界貿易機関(WTO)に加盟したものの、習近平指導部は経済活動を統制する動きを強めている」「国有企業の優遇やデジタルデータの囲い込みなど、TPPのルールと整合しない制度が多い」「新疆ウイグル自治区での強制労働疑惑も指摘される」という具合である。

加盟交渉の難航予想

 毎日以上に厳しいのが東京だ。同紙は冒頭の段落から、「中国は経済活動への統制を強めており、TPPの理念を共有できるのかどうか疑問がある」と投げ掛ける。

 また、台湾が申請に当たり、TPPのルールを守ることに自信を見せているのに対し、毎日の指摘と同様に、国有企業への優遇策が強化され、民間企業の自由な活力が損なわれる「国進民退」の弊害が大きくなるばかりか、ウイグル自治区での強制労働に対する国際社会からの批判には「内政干渉」と反発し、国連の調査も受け入れようとしない、と指摘する。

 さらに、加盟には全加盟国の承認が必要という高いハードルがあるが、「中国は自国の参加に理解を示すシンガポールが二二年に議長国になるのを、今後の交渉の好機ととらえたかもしれない」としつつ、加盟国のオーストラリアやベトナムが中国と経済摩擦や領土紛争を抱えており、加盟交渉は難航が予想されると強調。「今年の議長国である日本は、中国がTPPのルールを守る国たりえるかどうか、公正な議論を主導してほしい」と保守系紙と同様の厳しさを示すのである。

現状直視しない朝日

 それに対して、朝日は台湾申請後の掲載にもかかわらず、台湾には触れず、中国の申請についてだけ言及。「中国は日本にとって、輸出入の両面で最大の貿易相手国である。TPP加盟で関税撤廃などが加速すれば、日本経済の成長に寄与すると期待される」とべた褒めなのである。

 もちろん、TPPの条件を満たすには、「中国は政策を抜本的に改める必要がある」とし、「中国加盟のために、TPPの質を劣化させることがあってはならない。日本を含めた加盟国は、中国の覚悟を慎重に見極めねばならない」と指摘はする。が、しかし、「中国が本当に改革に取り組むのであれば、排除し続けることが正解ではないだろう」「目指すべきは、中国を新たな国際秩序に取り込む場としてTPPを生かすこと」と強調するのである。中国の現状から毎日や東京でさえ厳しく見るのに、朝日は何を見ているのであろうか。

(床井明男)