GDP1%成長でも楽観的な日経、不安げの読売、本紙は大きな懸念
◆日経は「堅調」を強調
17日に発表された2013年10~12月期の国内総生産(GDP)は、大方の予想を大きく下回る数値だった。時事通信が伝えた民間シンクタンク11社の平均予想成長率(年率)は、実質2・5%成長だったが、現実は1・0%成長で最近になく大きく外れた。まさに予想外の数字である。
外れた一番の要因は、4月からの消費増税を控えた駆け込み需要から大きく伸びると見られた個人消費が、前期比で0・5%増と小幅にとどまったからである。次には、予想以上に輸入が増え、輸出が増えなかったということか。
実質GDPの増減にどれだけ影響したかを示す寄与度で見ると、内需は個人消費、設備投資など全ての項目でプラスで計プラス0・8%。一方、外需はマイナス0・5%だから、ひとり外需、より正確には輸入だけが、大きく成長の足を引っ張った形である。
さて、今回の10~12月GDPを各紙はどう見たか。翌18日付で社説を掲載したのは日経、読売の2紙のみ。見出しは、日経が「経済の持続的な回復へ基盤固めが重要だ」、読売が「成長シナリオに狂いはないか」である。
日経は冒頭が、「日本経済が引き続き堅調な足取りをたどっている」で始まっていることからも分かるように、総じて楽観的である。そして、経済が今後持続的に拡大するには、民間企業は「設備投資や雇用・賃金を増やしていくことが重要」であり、政府は「企業活動の壁を取り払う規制改革などを通じて、成長力強化へ向けた基盤固めを急ぐべきだ」との主張である。
◆原発停止影響は同感
一方、読売の冒頭は、持続的な安定成長の達成へ、「アベノミクス」の真価が問われようとし、「最大の課題は、4月の消費税率引き上げのショックを、どのように乗り切るかである」と慎重である。
政府は消費増税後の「反動減」を、総額5・5兆円の経済対策や外需の回復で補い、安定的な成長軌道につなげるという「成長シナリオ」を描いているが、読売は、今回のGDPに「その目算が狂い始めた兆しも見える」という。
というのも、今GDP伸び悩みの主因について、同紙は「成長を牽引(けんいん)していた公共投資に一服感が出たことだ」と見るからで、「建設現場の人手不足や資材高騰による工事遅延が、一段と深刻化してきたのではないか」と懸念するのである。
確かに、公共投資は今回2・3%の伸びにとどまり、寄与度もわずか0・1%。「消費増税を克服する切り札として政府が重視する公共事業の執行が大幅に遅れれば、景気失速を防げないかもしれない」と同紙が心配するのも無理もない。
もっとも、ネックの一つになっている人手不足については、同紙も支持した小泉構造改革から先の民主党政権まで続いた、財政赤字の元凶として蔑視し続けた公共事業の削減のツケを、こういう形で負わされたわけである。
読売はまた、「原子力発電所が停止し、大量の火力発電燃料を輸入している悪影響も大きい」と指摘するが、こちらは同感である。
前述の通り、GDP寄与度で唯一マイナスで足を引っ張った輸入の増加の主因である。同紙が指摘するように、「安全性を確認できた原発を着実に再稼働すべき」であろう。
19日付で社説を掲載したのは本紙で、朝日など他紙はまだない。本紙は「改めて(消費)増税後の景気腰折れへの懸念を(強く)抱かせるものとなった」と、掲載3紙の中では最も憂慮の念が深い。
◆強くはない内需主導
それにしても、日経の楽観さは、どうなのだろう。同紙は、成長率がエコノミストらの予想を下回ったのは、「輸出が伸び悩んだため」とした。
しかし、同紙の冒頭指摘のように、本当に日本経済が「引き続き堅調な足取り」をたどり、個人消費などの内需が成長を牽引しているのなら、輸入によるマイナス寄与度を十分にカバーして、より高い数字が出てもおかしくないはずである。
成長の形は確かに内需主導だが、その牽引力はそう強くはないということである。さらに設備投資について、本紙は「先行指標である機械受注が今年1~3月期は、盛り上がるどころかマイナスに転じる見込みで、力強さばかりか持続力にも疑問符が付く状況である」とした。本紙の杞憂なのであろうか。
(床井明男)