東京五輪開幕、“骨のある”新潮の村井宮城県知事インタビュー記事
◆衝撃的なメダル予測
さまざまな課題の中で東京五輪2020が始まった。これから17日間、今までの懐疑的な報道姿勢とは打って変わって、テレビ、新聞は連日、五輪報道で埋め尽くすのだろう。週刊誌はそもそも日々の報道では勝負にならないから、斜めの角度から五輪を切って見せる。前代未聞の困難の中で、どう五輪大会をやり切るか、ある意味歴史に残る教訓を記録することになる。
実質的には23日の開会式前にこの週の号は出てしまっているが、各誌の特徴が出ていて面白い。
週刊新潮(7月29日号)は「特集・不思議の国の『東京五輪』日の丸『金メダル』ラッシュ“凡戦”だけど」の記事をトップに載せている。“よくある”メダル予想だ。「金メダル34個」だそうだ。「米・グレースノート社」の「衝撃的な予測」である。1964年の東京五輪と2004年のアテネ五輪の「金16個」が最多だったが、その2倍というのだから確かに「衝撃的」だ。しかし、それが当たろうが外れようが、今回の関心はもっと別のところにあると思う。
◆信念曲げず「有観客」
そんな中“骨のある”記事がある。村井嘉浩宮城県知事へのインタビューだ。「無観客」が原則となった中で、ほぼ唯一「有観客」で実施する。会場となる仙台市の市長や市民の反対が強いのに、なぜやるのか、その理由を同誌に述べている。
まず、「復興オリンピック」として「内外の方々に感謝の気持ちを伝えたい」こと。次に野球やJリーグ、その他のイベントでは観客を入れているのに、どうして五輪だけダメなのか、「行政はすべての人々を平等に扱わなければならない」からだと説明した。
野球やサッカーでクラスターは発生していない。「科学的に考えてもクラスターが発生して県内が大変な状況になる可能性は極めて低い」とし、信念を貫くのだという。
開会式で新国立競技場を取り囲んでいた人々の多さを見れば、今さらながら観客を入れる方法を組織委も東京都も考えるべきだったのではないだろうかと思う。ワクチンや陰性の証明書を用意するとか。
それにはワクチンがあまりにも遅過ぎた。最初から五輪に間に合わせるつもりがなかったのだろうか。村井知事の「信念を曲げない」有観客が、終わってみてどう評価されるか。
週刊朝日(7月30日号)は「こんな五輪に誰がした」を載せた。同誌らしい“ひねくれ方”だ。だがよく読めばいいことも書いてある。記事の最後にスポーツライターの小林信也氏がこう語る。
「いくつもの問題が生じたのは事実ですが、今の世論は冷静さを欠く。五輪そのものの課題と、政府のコロナ対策への批判とは切り離して論じられるべきです」と。記事は「世論」としているが、小林氏の真意は、世論を誤導している「メディア」を指していると、どうしても読める。
◆接種拒む人々の属性
サンデー毎日(8月1日号)はジャーナリスト鈴木隆祐氏の「東京五輪置き去りにされるワクチン弱者」を載せた。高齢者からワクチン接種を始めたが、実際に五輪に関わろうとする年齢層がワクチンを受けられないというチグハグなワクチン政策を批判する。これはもっともな話だ。
それに興味深いのは「ワクチンを打たない」人々の特徴を挙げていることだ。国立精神・神経医療研究センターの調査結果を紹介した。それによると、「接種したくない人」の属性は独り暮らし、低所得、低学歴、政府への不信感、そして「重度の気分の落ち込みがある」という。
この結果を見た消費社会研究家の三浦展氏は、受ける人は結局、自分のため以上に家族や周囲の人々への配慮、充実した人生を保持したいという気持ちが根底にあると分析し、反対に受けたくない人は、「『周囲や地域に貢献し、他人から承認されたい』と考えることも少ない」人々だという。考えさせられる分析である。
(岩崎 哲)





