安倍前首相が指摘する通り、なかなか変わらない朝日の「捏造体質」

◆毎日が囲み記事掲載

 「『朝日新聞は捏造(ねつぞう)体質』安倍前首相、講演で」。こんな見出し記事が毎日23日付に載った。政治面ではなく社会面、それも囲み記事なので、いやが上にも目に付く。

 記事には、安倍晋三前首相が「都内で行われた講演で、朝日新聞の報道について『なかなか、捏造体質は変わらないようだ』と批判した。『捏造』の具体例については言及しなかった」とある。講演は他紙の記者も聞いただろうが、記事にしたのは毎日だけ。残念なことに朝日にはない。

 安倍氏は若手議員への教訓として「私は(衆院)当選3回のときから批判されてきた。ずっと批判され続けても首相になったので君らもしっかり批判されろと言っている」と述べた、とある。朝日への皮肉が効いている。

 毎日が報じるからにはニュースバリュー(報道する価値)があるのだろう。安倍氏の朝日批判に共鳴したのか(まず、ないか)、それとも「問題発言」と見たか。そういえば、毎日の丸山昌宏社長が新聞協会会長に就任する。「メディア批判は許さないぞ」との決意表明で朝日にエールを送ったか。まあ、どうでもいいが、「捏造」の具体例に言及しなかったことをあげつらう意図なら、お門違いだ。

 安倍氏の当選3回の時は小泉政権の内閣官房副長官時代で、2004年の小泉訪朝に同行し「安易に妥協すべきでない」と毅然(きぜん)たる態度を貫いた。それが親北・朝日の癇(かん)に障ったようで、03年には安倍氏を名指し批判する社説まで掲げた。爾来(じらい)、安倍氏と朝日のバトルが繰り広げられてきた。

◆最高裁で捏造が確定

 むろん勝負はついている。安倍氏は首相まで上り詰め、朝日は14年に慰安婦報道と福島原発事故「吉田調書」報道をめぐる捏造記事が白日の下にさらされ、社長が引責辞任した。ちなみに今年3月の最高裁判決で捏造が確定、朝日は完全敗北した。

 当時、朝日自身が設置した第三者委員会で委員を務めた外交評論家の岡本行夫氏(昨年4月死去)は、社員ヒアリングで何人もから「角度をつける」という言葉を聞いたと述べている(朝日14年12月23日付)。

 「真実を伝えるだけでは報道にならない、朝日新聞としての方向性をつけて、初めて見出しがつく」。それで偏向・捏造を平然と「角度」と呼んでいた。慰安婦問題だけでなく、原発、防衛・日米安保、集団的自衛権、秘密保護等々、いずれの場合にも「角度」を付けた。

 政治学者の北岡伸一氏(当時、国際大学学長)は「粗雑な事実の把握」「キャンペーン体質の過剰」「物事をもっぱら政府対人民の図式で考える傾向」「過剰な正義の追求」「現実的な解決策の提示の欠如」「論点のすり替え」の具体例を列挙し、「自らの主張のために、他者の言説を歪曲(わいきょく)ないし貶(おとし)める傾向」を挙げていた。これが「捏造体質」だ。

◆「角度」を付けて報道

 では今はどうか。原発処理水についての捏造は先週の本欄で、普天間移設については先々週に取り上げたが、朝日夕刊の寸評コラム「素粒子」はこう書いている。

 「副総理には『飲める水』でも、漁業者らには風評被害を呼ぶ水だ。沖縄・辺野古移設と二重写しの地元軽視政治」(14日付)

 処理水は世界保健機関(WHO)の基準の7分の1まで希釈するので麻生太郎副総理は「飲める水」と比喩したが、朝日は逆に風評被害を期待する「呼び水」と強弁している。が、そもそも原発の地元自治体も福島県も処理水放出に反対していない。普天間のある宜野湾市は移設に反対せず、辺野古のある名護市では反対派が市長選で敗北、地元中の地元、辺野古区は海兵隊キャンプシュワブと共存しており移設容認だ。

 それが地元軽視とはお笑いだ。朝日こそ原発と辺野古に「角度」を付け二重写しの捏造をやっている。安倍氏が言うように「なかなか、捏造体質は変わらない」が正解だ。

(増 記代司)