普天間返還合意から25年、問答無用のごり押し続ける地元紙と朝日

◆「約束」実現阻む左翼

 「四半世紀たっても果たされない『約束』とは何なのか」と朝日が拳を振り上げている(10日付社説)。沖縄県の米軍普天間飛行場のことだ。日米両政府の返還合意から12日で25年が経(た)つが、いまだ返還されていない。地元紙・琉球新報は「即時閉鎖こそ負担軽減だ」と、中国が小躍りするような見出しを張った(11日付社説)。

 天に唾するとはこのことだ。「約束」を果たせないよう足を引っ張ってきたのは左翼勢力、朝日や地元・沖縄紙だったのは先刻承知のことだ。

 普天間返還は1996年の米兵少女暴行事件を契機に日米政府が合意し、97年に名護市辺野古への移設を決めた。ところが、左翼勢力は移設と呼ばず「辺野古新基地」と称し反対闘争を繰り広げた。2009年には鳩山・民主党政権が「最低でも県外」と唱え、返還を泥沼に引きずり込んだ。

 13年12月に当時の仲井眞弘多知事が沖縄防衛局の辺野古の埋め立て申請を承認したが、14年に登場した翁長雄志知事はこれをひっくり返し承認を取り消した。これには国が訴え、最高裁で県敗訴が確定。それでも懲りずに「裁判闘争」を起こし、辺野古移設工事をしばしば中断させた(いずれも県敗訴)。

 そればかりか、19年2月には県民投票で移設阻止を目論(もくろ)んだ。これとて法的根拠はない。反対派は「反対の圧倒的民意」を見せ付けるとし、投票率は「6割超え」、反対票は全有権者「半数超え」を目指したが、投票率は半数をわずかに超える52・5%に低迷。「反対」は71・7%、全有権者比では37・6%で4割以下。「反対の圧倒的民意」とは言い難かった。

 それなのに朝日社説は「辺野古ノーの民意を顧みることなく、問答無用のごり押しが続く」と強弁する。話はあべこべだ。ごり押ししていれば、とっくに返還・移設が成就している。問答無用の反対ごり押しは左派紙の方だ。

◆英霊を侮辱する新報

 折しも安保法制が施行されて5年。琉球新報はこれに異を唱え、こう言った。

 「有事となれば真っ先に狙われるのは国境の島であり、米軍、自衛隊基地が集中する沖縄であるのは疑いない。76年前、軍民混在の地上戦を経験した県民は『軍隊は住民を守らない』という教訓を得た」(3月29日付)

 それで安保法制に異を唱える。それでも有事になれば沖縄が狙われるという認識はあるようだ。だが、米軍、自衛隊基地が集中するから狙われるのではない。尖閣諸島には米軍、自衛隊基地がない。だから狙われているのだ。中国は南西諸島を「第1列島線」と位置付け、戦力展開の目標ラインに据えている。沖縄が「丸裸」ならひとたまりもない。

 「軍隊は住民を守らない」というのも筋違いだ。軍事的劣勢から上陸を許し、負けたからそうなった。そうならないように備えるのだ。それとも琉球新報はウイグルやチベットで蛮行を繰り広げる中国の軍隊が沖縄の住民を守ってくれるとでも思っているのか。

 沖縄戦の最後の激戦地だった糸満市摩文仁の丘には全国各県の出身地別の慰霊・平和祈念碑がある。沖縄を死守しようと学徒出陣した多くの若者が特攻機で散華した。戦死者のうち県外出身兵は約6万6000人。それを「軍隊は住民を守らない」教訓とは英霊を侮辱するにも程がある。

◆反米親中のタイムス

 一方、沖縄タイムスは「米軍との一体化を危惧」するとし、「中国との間で太いパイプをつくる、といった一見すると遠回りに見える外交努力が、地域の平和を築く上で求められている」と主張している(3月29日付社説)。

 恐れ入った。そんな遠回りをしているうちに沖縄は蹂躙(じゅうりん)されてしまうぞ、と忠告したくなる。それとも中国との「太いパイプ」で沖縄から米軍を追い出すのが「平和外交」とでも言うのだろうか。

 普天間返還合意から25年、左派紙の“返還潰(つぶ)し”と付き合っていれば、いつまで経っても普天間は返らない。

(増 記代司)