衆院各党代表質問に対する各紙論調が印象づけた民主党の影の薄さ
◆責任野党と維新評価
政治家には、この国をどんな国にして治め国民を幸せにするのかという経綸(けいりん)の才、あるいは経済の語源である経国済民(経世済民=世を治め民を救済する)の志や情熱が活動の原動力になければならない。そうでなければ、ただの権力亡者であり、人々にとっては粗大ゴミよりも迷惑至極な存在でしかない。
政治理念も何もなく、ただ総理大臣になりたいだけの人がなってしまったり、政権を獲得したあとの経綸も何もなく担当能力も整わないまま、いくつもの政党が組んでなったり、あるいは「政権交代」のワンフレーズだけで熱狂する国民を幻惑し、ついには政権をものにした例がころがっている。よそ事ではない。いずれもつい最近までの日本にあったことで、国民は今もそれらの混乱がもたらしたツケを払わされているのだ。
安倍晋三首相の施政方針演説を受けて一昨日から始まった国会の各党代表質問について、朝日を除く各紙が昨日(29日付)掲げた社説などの論調は、建設的野党の在り方について説くもので大変に興味深かった。
「『責任野党』の中身が問われる」のタイトルの読売は、野党の路線が政策ごとに是々非々で対応するものと、政権への対決姿勢を維持するものとに路線が違ってきたことを分析する。前者が日本維新の会とみんなの党。維新の会の松野頼久国会議員団幹事長が「外交・安保、憲法改正については協力するが…」と代表質問で責任野党を主張し、昨年の臨時国会で両党は、特定秘密保護法の修正で与党と合意した。
こうした両党について読売は「集団的自衛権の行使を可能にするよう憲法解釈を改める問題は、一つの試金石となる」とした上で「与党との議論によって法案をより良く仕上げることも野党の責務である」「与野党の建設的な議論を期待したい」と評価した。両党の責任野党の自覚が、建設的な与野党関係として新たな展望を開くことに期待したい。
◆不評買った海江田氏
一方で、せっかくの与党経験を持ちながらも旧社会党のような何でも反対の対決姿勢を鮮明にした民主党。読売は、経済政策でデフレ脱却の妙案や雇用の安定の具体策、脱原発ならその具体的政策の提示などの実行を求めたが、同感だ。民主党が幻滅だったのは決められない与党だったからだが、野党になっても批判ばかりでなかなか対案を出さないルーズさ、グータラぶりでは前者両党に置いていかれるだけであろう。
民主党の海江田万里代表の代表質問については小紙(社説「政権時の失政に反省ない民主」)も批判した。「安倍政権に『経済』『外交』『国の在り方』の三つのリスクがあるとして追及した。/だが、これらに伴う困難は、かつての民主党政権による失政が響いている」と指摘。読売と同じように「民主党は野党第1党として、政権を担った経験を生かして国益につながる代案を提示し、政権復帰を期待されるような存在感を示すべき」と代案提示を求めたのである。
産経(主張「活発な安保論議歓迎する」)も、前述した読売同様に日本維新の会、みんなの党を念頭に「衆院代表質問で、日本の安全保障政策をより積極的に論じようという動きが、与野党双方から出てきたことを歓迎したい」「国家の根幹を成す安保政策で、与野党が現実的な議論を重ねることは極めて重要」と議論の深まりに期待を込めている。
一方で、民主党・海江田代表の質問に対しては「抽象論での批判が目立ち、防衛力充実の視点に欠けている。党として定まっていない集団的自衛権への対応を決めるのが先だ」と、脇の甘さを突かれたのである。
◆日経は経済論戦期待
日経(社説「与野党は経済政策メニュー示し競い合え」)は、経済紙らしく法人税改革への取り組みへの首相答弁が曖昧だったことを批判。「与野党が経済政策のメニューを示し、競い合うのがよい国会論戦ではないだろうか」と、成長戦略などで与野党に活発な論議を促した。さらに「充実した審議をする国会への転換」を促した維新の松野氏に応えて「政府提出法案と野党の対案を一括審議するのは、政策本位の与野党の話し合いを活性化させるよい手段だ」と、国会論議の深化に期待を寄せた。
以上4紙が注目したのは首相の責任野党として呼びかけに応じた維新やみんなの両党。それを毎日(社説「『補完野党』に陥るな」)はタイトルのような批判を展開し、民主党には集団的自衛権や原発問題での中途半端な質問に疑問を投げかけた。いずれにせよ、民主党の影が薄いことを印象づけられるのである。
(堀本和博)