トランプ逆転のシナリオを解説、コロナへの冷静な対処呼び掛ける新潮
◆滞る「選挙人」の確定
米大統領選は民主党のバイデン候補が「勝利宣言」をしたものの、まだ決着は付いていない。トランプ大統領は票の数え直しを要求し、その結果、青(バイデン氏)が赤(トランプ大統領)に転じた州もあるはずなのに、米メディアはこれといって報道せず、モヤっとした感じが続く。他国のこととはいえ落ち着きが悪くてしようがない。
いったい米大統領選挙は今後、どういう手続きが待っているのか。週刊新潮(11月19日号)が特集で伝えている。「『トランプ大逆転』がまだある最終シナリオ」だ。「アメリカ政治に詳しい成蹊大学の西山隆行教授」が同誌に解説する。
「まず12月8日までに全米各州で選挙人を確定。続いて、14日に選挙人による投票が行われ、来年1月6日に開票され」るのだが、その「選挙人」確定が滞っている。州ごとに違いがあるようだが、票差が「0・5%以下の場合、再集計の申し立てを認める」と定めてあり、僅差の場合、例えば「2%」でも再集計を州務長官が求める場合もある。正確を期してのことだ。
票差だけではない。トランプ大統領が「不正」の可能性を前々から指摘していた「郵便投票」について、トランプ陣営は訴訟を行っており、郵便投票の精査・再集計の可能性もあって、その結論が出ないことには票は確定しないことになる。
◆下院で選出の可能性
確定しない場合はどうなるのか。西山氏が続ける。「1月6日の時点で、いずれの候補も過半数の選挙人を獲得できなかった場合、合衆国憲法では、下院が大統領を選出すると定めて」いるという。下院は民主党が多数のはず。バイデン氏が有利になるのか。
ところが、「選出方法では50州に1票ずつ割り当てる」ことになっている。議員の数で決まるわけではないのだ。「下院議員は選出された州ごとに投票する候補を1人選ぶわけ」で、つまりその州で複数いる下院議員のうち、共和党が多ければ共和党候補(トランプ)を、民主党が多ければ民主党候補(バイデン)を選出することになる。全米50州のうち、共和党が多い州は「26州」あるという。半数を超えており、「トランプ大統領が有利に」なる。
既に菅義偉首相をはじめとして、バイデン氏に祝意を表した各国首脳は多い。これがもし大逆転したら、そのバツの悪さは半端ないことになるし、トランプ大統領の心証が極めて悪くなる。中国、ロシアの首脳が黙していることに、この選挙の不可解さを見る。
米国のメディアではなく「法」に従って推移を見守った方が賢明だと言えよう。
◆桁違いに少ない「数」
新型コロナウイルス感染が増えてきている。「第3波」という声も聞こえる。だが自治体は「都市封鎖」はせず、政府は動き回って飲み食いすることを推奨する「GoToキャンペーン」を下ろさない。国民の間に不安と“慣れ”が混在している。
そんな中、同誌は「『コロナ感染拡大』はそんなに問題なのか」という特集を載せた。同誌は要は「死者数」なのだという。第3波だとメディアが騒いでも「11月になってからの死者数は、1日から9日まで1日平均7人」である。それに対してインフルエンザは「1日平均54人」(昨年1月)だった。8倍近く多い。
また日本は欧米と比べて感染者数が少ない。ワイドショーなどは「1日あたりの感染者数が3日連続で1000人を超えた」と視聴者の恐怖心を煽っているが、フランスは「8万6852人」(11月7日)、イタリア「3万9809人」(同7日)だ。米国にいたっては「13万2797人」(同6日)である。桁自体が違う。
同誌が冷静に対処しようとしているのは「数」の違いだけではない。専門家は、今では「検査体制が拡充されて早期発見、治療ができるようになった」「治療経験が豊富になり、治療薬も早めに使えるようになった」「推奨されている薬を迷わず使えるようになった。だから重症化率が下がった」と同誌に語っている。
コロナ予防も米大統領選の行方も冷静に対したい。
(岩崎 哲)