共産党支配という日本学術会議のアキレス腱に触れた「プライムニュース」
◆問題の当事者が出席
テレビ・新聞・ネットなどメディアは今、菅義偉首相が日本学術会議が推薦した会員候補6人を任命拒否した問題で持ち切りだ。BSフジの「プライムニュース」も19日、この問題をテーマにした。
出席したのは、元日本学術会議会長の大西隆、早稲田大学大学院法務研究科教授の岡田正則、自民党参議院議員の猪口邦子、そしてジャーナリストの門田隆将。岡田は今回、任命を拒否された当事者。大学教授から政界に転じた猪口は元会員。この2人と大西は当然、同会議の内部事情に詳しい。だから、これまでメディアではあまり触れられてこなかった内容も聞けるだろう、と期待して見た。
だが、彼らが饒舌(じょうぜつ)だったのはアカデミズムのあるべき姿や政府との距離感についてだけで、問題の核心が見えないまま時間が過ぎてしまった。現在の同会議の問題を語る上で、避けては通れない核心部分を突く発言が飛び出したのは、番組の終了間際になってからだ。
“反共主義者”として知られる門田が共産党との関わりを指摘し、会員候補拒否問題の根を明らかにしようとしたのだ。門田の発言の要旨は次のようなものだった。
日本学術会議は1949年、GHQ(連合国軍総司令部)の占領下で発足した。GHQは日本を再軍備させないために、20万人を公職追放したが、そこには学者も多く含まれていた。その状況下で設立された同会議は当初、会員は選挙で選ばれた。
そこで激しい選挙運動が繰り広げられたが、「一番力を発揮したのが共産党で、同党が多くの会員を占めた。そのことがずっと続き、今も尾を引いている」。そのことが1950年と67年の「軍事目的の科学研究は行わない」という声明と、2017年の安全保障技術研究推進制度に反対する声明の背景にある。
残念ながら、番組はここで時間切れとなり、司会の反町理は「今日予定していた項目の4割ぐらいしか議論できなかったので、安全保障などの面から、もう一度日本学術会議を取り上げたい」と、議論を打ち切った。
◆変更された選出方法
だが、そこで「一言だけ」と口を挟んだのが大西。「今、尾を引いているとおっしゃったが、尾は引いていません。メンバーはがらっと替わりました。1983年を境にメンバーがほとんどが入れ替わっています」
大西が言った「83年を境に」というのは、法改正で研究分野の学会ごとに候補者を推薦し、その推薦に基づいて総理大臣が任命する制度に変わったことを指している。背景には、組織票で共産党シンパが多数を占めたことへの批判が高まったことがあった。それでも、馴(な)れ合いによる推薦に批判が高まり、選出方法は2005年、学会ごとの推薦から現役会員と連携会員の推薦に変更となって、現在に至っている。
司会者が「続きは次回に」と言ったにもかかわらずに、大西があえて「尾を引いていません」と否定したのは、それだけ長く共産党に牛耳られてきたことが同会議の“アキレス腱”になっているからだろう。
◆共産党系団体に所属
実は、門田が「共産党」の党名を出した時、顔を横に振ってこれを暗に否定したのは岡田だ。彼の経歴を調べると、ウィキペディアに「民主主義科学者協会法律部会元理事」というのが出てくる。今回、岡田と共に、任命拒否された小沢隆一(東京慈恵会医科大教授)は元同部会「副理事長」、松宮孝明(立命館大法務研究科教授)も元同部会「理事」だ。
では、民主主義科学者協会法律部会とはいかなる団体なのかといえば、これもウィキペディアに「日本共産党系法学者による協会」とある。大西は「尾は引いていません」と言うが、こうした人物が推薦されているのを見れば、日本学術会議には共産党ないしその思想の影響がいまだに強く残っているように思えるのだが……。
同番組は26日、再び同じ顔ぶれで、時間切れとなって議論できなかった「軍事目的の科学研究」問題を取り上げるという。それと併せて、日本学術会議に対する共産党の影響力についてもさらに議論してほしい。今夜が楽しみだ。
(敬称略)
(森田清策)