来年の東京五輪のマラソンと競歩の実施コース…


 来年の東京五輪のマラソンと競歩の実施コースが東京都から札幌市に変更される見通しである。国際オリンピック委員会(IOC)と大会組織委員会、都などが明日から都内で開く調整委員会(J・コーツ委員長)で正式決定となる。

 すでに大会組織委はIOCの札幌ドーム発着のコース案に対し、市中心部の大通公園案を検討していることが伝えられるなど事実上、札幌実施で動きだしている。開幕まで300日を切る中での急転直下の変更だが、「選手の健康優先」の決定を各紙社説はそろって「やむをえまい」と追認している。

 理由は今月6日まで中東ドーハ(カタールの首都)で開催された陸上の世界選手権。酷暑をしのぐため女子マラソンは異例の深夜スタートとしたが、レース中に倒れて棄権する選手が続出した。次々に倒れ込む選手が担架で運ばれる映像が世界に衝撃を与えたのだ。

 東京もドーハとほぼ同じ気温、湿度であることへの危惧が、IOCのバッハ会長を強引な札幌決定に走らせた。札幌の夏は平均気温で東京より約5度低いことが決定打である。

 東京も暑さ問題は織り込み済み。マラソンコースの道路を「遮熱性舗装」と「保水性舗装」に整備するなど対策を進めてきた。それでも近年の東京の猛暑を前に、限界があるというのだろう。

 東京側には戸惑いと不満、反発が残るのは当然。都民に「必要なら謝りたい」(毎日18日付)と語るコーツ氏はそうした上で前に進むべきだ。