天皇陛下が即位を内外に宣言される「即位礼…


 天皇陛下が即位を内外に宣言される「即位礼正殿の儀」をテレビで拝見した。三権の長や外国元首、国際機関や各界の代表者ら1999人が参列して行われ、この厳粛な時間に歴史の新しいページが開かれたと実感した。

 高御座(たかみくら)、御帳台(みちょうだい)、万歳旙(ばんざいばん)など、特別な儀式でなければ使われることのない用語も高貴に感じられた。こうした演出は飛鳥・奈良時代から古代中国の文化を元に形成され、千数百年の歴史を持つという。

 陛下がお召しになった装束「黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)」は櫨(はぜ)の樹皮と蘇芳(すおう)から取った染料で染めた衣裳(いしょう)で、赤みがかった黄色。平安時代には草木から染料を取って衣を染めたが、その色名は70種にも上るという。

 皇族方も装束や十二単(ひとえ)で平安時代さながら。みやびな宮廷文化に思いをはせた。が、それ以後の長い歴史は、軍事力を不可欠とした封建時代であり、近代に入ると世界的な規模での「戦争の世紀」に突入する。

 幕末から敗戦までの約100年間を作家の林房雄は「東亜百年戦争」と呼んだ。どれだけ多くの人々が犠牲になったことか。そのような過去を振り返ると、陛下が「国民の幸せと世界の平和を常に願い」と語られたお言葉は深い。

 昭和天皇も上皇陛下も願われてきたことだ。東洋哲学者中村元氏の『日本人の思惟方法』(春秋社)によると、日本人は普遍的な理法より特定の人格に「信」を置く特色がある。その中心にあるのが天皇である。この日、富士山には初冠雪があった。