TBSで先月、2度にわたって「やらせ」…
TBSで先月、2度にわたって「やらせ」が発覚した。一つは、映像の早回し問題。少年の野球の投球場面を早回しすることで、球速が実際よりも速いように見せ掛けた。次が爬虫(はちゅう)類ハンターの番組。現地にあらかじめ珍しい爬虫類を放っておいて、あたかもその時その場で捕獲したかのように見せ掛けた。
爬虫類ハンターの方がやらせの事案として悪質だ。確かに、狙い通りに爬虫類を発見できた方が番組としては面白い。だが、こうした予定調和は現実とは正反対だ。だからこそみんな苦労しているのだが、テレビではやらせによってそれが可能となる。
日程も予算も限られた中、達成困難な目的のために海外で番組を収録するのだから、やらせの誘惑にかられることは当然考えられる。しかしやらせを行えば、結局は視聴者の信頼を失ってしまう。
2000年11月、「神の手」と呼ばれた考古学研究家が手持ちの石器を地層に埋めて、旧石器時代の石器を発見したかのように見せ掛けていた事件が発覚した。簡単には見つからないはずなのに、彼がたやすく発見したので話題となった。この時は日本史の教科書の記述にまで影響が及んだ。
テレビ局であれ考古学者であれ、あらゆる組織や個人は「自身をよく見せたい」と考える。だからといって、やらせが許されるわけではない。
特に、テレビ局は政治や社会などの問題を批判することが役割の一つ。それだけに責任はとりわけ重大だ。