北アルプス唐松岳(2696㍍)東面の唐松沢…


 北アルプス唐松岳(2696㍍)東面の唐松沢雪渓(長野県白馬村)が、新潟大などの調査で氷河と確認された。氷河は雪が押しつぶされてできた氷の塊「氷体」が重力により長期間流動しているもの(小紙10月4日付)。

 調査で用いたのは、雪渓の5カ所に埋め込んだポールの先端に設置した全地球測位システム(GPS)。9月から10月の29日間で、最大約25㌢動いていたことを確認した。確認されたのは鹿島槍ケ岳カクネ里雪渓などに続く7例目。

 日本アルプスの万年雪が氷河かどうか議論されたのは1919年ごろからだ。が、残雪が最小になる晩秋について的確な報告がなく、自ら調査に乗り出したのは生物学者で登山家の今西錦司。

 28年10月、26歳の時に、北アルプス剱岳の劔沢をはじめ五つの支流、真砂沢、平蔵沢、長次郎沢、三ノ窓、小窓を調べる。そこで見たのは雪面の表面から底部に至るほど完全で透明な氷だった。

 報告書「劔沢の万年雪」(『日本山岳研究』中央公論社)で今西は積雪と融解、氷河地形などに触れて「雪渓の底では年々歳々尽きることなく氷は作られ氷は融けている」と記すが、氷河か否かについては議論を控えた。

 日本雪氷学会が三ノ窓、小窓、立山の御前沢を氷河と認定したのは2012年。18年にはカクネ里、剱岳の池ノ谷(たん)、立山の内蔵助(くらのすけ)を認定した。長い空白期間があったが、氷河の判定はGPSの登場を待たなければできなかったようだ。