「ローソクの灯に一夜あけ秋出水」(巻野南風)…
「ローソクの灯に一夜あけ秋出水」(巻野南風)。この夏も台風の影響などによる集中豪雨が各地であり、大きな災害となった。床下浸水したり、道路の冠水によって自動車が流されたりする光景などをテレビ報道で見ることも少なくない。
こうした災害を表現した俳句の季語は「台風」のほか、「野分(のわき)」や豪雨そのものの表現である「秋出水(あきでみず)」がある。台風は説明不要だが、野分や秋出水などの言葉は今ではほとんど使われていない。ただ、季語としては健在である。
「猪もともに吹るゝ野分かな」(芭蕉)。野分は、稲畑汀子編『ホトトギス新歳時記』によれば「秋の疾風のことで、台風やその余波の風ともいえる。野の草を吹き分けるという意味である」。これもまた、台風と関係がある。いずれにしても、秋の風は少しばかり荒々しいイメージがある。
現在、気流子の住んでいるのはマンションの3階で、野分と言っていいほどの風が吹くと、ガラスがビリビリと鳴り、風もごうごうと渦巻くような音を響かせる。その音を聞くと、今にも風がすべてを吹き飛ばしてしまうような印象さえ受ける。
とはいえ、途切れがちだが、まだセミの鳴き声もするし、秋という感じはしない。ただ夏の間は、蛇口をひねると水が熱せられてお湯のようだったが、今ではひんやりとしている。
それでも湿度が高い日が多いので、夕方ごろになると汗ばむことが多い。カラッとした秋晴れが待たれるところだ。