<水音も風の音にも九月かな>副島いみ子…
<水音も風の音にも九月かな>副島いみ子。とは詠んでも、暦の立秋(先月8日)後の残暑が厳しい。暑さが収まるとされる処暑(しょしょ)は今年は先月23日だったが、炎暑にあえぐ日々が続いた。
そして、次の目安がこの8日の白露(はくろ)である。野草に宿るしらつゆなどに秋の気配をひとしお感じさせられる、というのだが、気象庁の予報ではまだまだ暑さは続きそう。炎天に燃えるサルスベリの花も元気だし、夏の「炎帝」もまだ余力を残しているようだ。
秋分は23日であるが、今年は暑さ寒さも彼岸まで――と言われる年となりそうだ。それでも、日中はともかく、朝晩のほんのわずかな気配に白露を感じる人もおられよう。季節は静かに忍び寄っている。
わずかに濡れている庭の葉を見て清少納言は「前栽(せんざい)のつゆこぼるばかりぬれかかりたるも、いとをかし」(『枕草子』)と秋の風情を捉えている。
サルスベリの赤、ヒマワリの黄、ノウゼンカズラのオレンジ色の夏の花。それが初秋の風を感じるようになると、淡く白い花が目を引くようになる。ソバの花、白木槿(むくげ)、白芙蓉(ふよう)、白粉(おしろい)花などなど。
しばらくはなお猛暑の名残に汗を拭う日々は続いても、夏から秋へバトンは移りつつある。透明な風と白い花のイメージがある初秋。「九月の声を聞くと、大気が澄み爽やかな秋の感じがようやく深くなる」(稲畑汀子編『ホトトギス新歳時記』)のは、もう少し先になりそうだが、静かに確実にやって来る。