さすがにここまでやるとは思わなかった――…


 さすがにここまでやるとは思わなかった――というのが正直なところだ。日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄を決定した韓国の文在寅政権である。

 協定破棄は中国やロシア、北朝鮮に付け込むスキを与えることになる。米国のポンペオ国務長官は「強烈な失望」を表明したが、極めて異例の事態と言えよう。日韓が軍事情報を共有できなければ抑止力の低下にもつながり、韓国は自分の首を絞めることにもなりかねない。事ここに至って韓国内でも賛否が真っ二つに割れている。

 日本ではあまり報じられていないが、韓国では15日の光復節(日本統治からの解放日)に反文政権デモが行われた。文政権の北朝鮮に対する融和路線や反日的な政策に疑問を持つ人は、保守派を中心に韓国でも少なくない。協定破棄で、こうした人たちは一層増えるのではないか。

 さらに、文政権側近の不正疑惑から国民の目をそらすために協定を破棄したとの見方も出ている。側近をかばって、国民の生命や財産を危険にさらすのであれば、国民からの支持は失われよう。

 これを受け、北朝鮮は早速、日本海に向けて弾道ミサイルを2発発射する挑発行為に出た。中国は地域のパワーバランスの面から、日米韓の安全保障上の連携が崩れることを期待している。

 日韓関係は悪化の一途をたどっているが、地域の平和と安定のために日米韓3カ国が果たす役割は大きい。文氏はこのことを自覚する必要がある。