たばこの銘柄に「ゴールデンバット」がある…
たばこの銘柄に「ゴールデンバット」があるのを知ったのはもう半世紀も前のこと。大学受験の予備校で英語教師が黒板に「SWEET & MILD」と書いた。英語は単語ではなく句で覚えるようにとの配慮だ。
これはバットのラベルに記されていた文字で、教師は未成年にたばこを勧めたわけではない。が、その名を記憶にとどめることになった。当時も販売されていたが、一般のたばこ屋さんには置いていなかった。
エッセイストの故串田孫一さんは、この銘柄が大好きで、東京に住んでいながら、電車を乗り継いで遠く田舎まで買いに行かなければならなかったことを書いていた。安価でもあった。
これが愛好されたのは戦前戦中らしい。太宰治は小説「富嶽百景」の中で「仕事する気も起らず、机のまえに坐って、とりとめのない楽書をしながら、バットを七箱も八箱も吸い……」と登場させた。
今では一般にも知られず、目にも触れなかったバットだが、113年の歴史を閉じて販売を終了するというニュースが伝えられた(小紙7月26日付)。軽減税率が9月末で廃止され、継続販売が困難と判断されたからだ。
1970年以前の映画や演歌ではよく喫煙シーンが登場したが、その後は姿を消していく。喫煙すると肺がんその他の病気の罹患率が高くなり、世界保健機関(WHO)が各国に対策を取るように勧告しかたらだ。気流子も煙が苦手で、食事処や喫茶店ではいつも禁煙室を選ぶ。