ロボットは機構学、制御学、AI(人工知能)…
ロボットは機構学、制御学、AI(人工知能)など既成の学問の集積体ではあるが、今日、それらの専門家が集まっただけでは、ロボットを設計することもできないそうだ。
科学の知識体系が非常に細分化されてしまっていて、専門家たちが持つ知識をつないで共働しても、完成体との間に埋められない箇所が出てくるためだ。その欠けた部分は“ミッシングリンク”などと呼ばれている。
こうした実情が示すのは、大学の学問や技術が、今の産業社会の要請に十分に応えられないということでもあるだろう。文部科学省は来春にも、大学で学部横断的なテーマの教育・研究に当たる「連携課程」を認める方針を決めた。
新しい学部開設ではないが、学部を超えて教授陣を招聘(しょうへい)でき、知識の相互補完が可能だ。例えばAIの連携課程では、工学部、理学部、経済学部、法学部などの教員の連携もあろう。明治期以来、わが国の大学で続いた理系、文系の画一的な分類を突破する契機にもなりそうだ。
現在、言語学一つ取ってみても、一般に文学部や外国語学部などの文系の学部の中に配置されている。しかし言語学は、自然科学の一分野としても発展してきた。このような不整合をただすこともできる。
学問分野の境界線は、主に時代環境によって便宜上設けられたもの。分化された知識は統合され、結局「人間とは何か」を追究することになるのではないか、などと思ったりする。