九州地方を襲った記録的な豪雨の際、鹿児島…


 九州地方を襲った記録的な豪雨の際、鹿児島市は市内全域で避難指示を出した。しかし、避難率は全体の0・6%にとどまった。同市当局は「住民との間で危機意識に開きがあった」としている。

 開きがあるのは当然と言えば当然だが、大き過ぎる。近年、各地の豪雨災害で的確でない避難指示や勧告が出されたこともあって、避難人数を相当意識していたのではないかとも言われる。

 こうした避難勧告・指示の現状が続けば“オオカミが来た”の意識を住民に植え付けかねない。避難指示の在り方は、災害が予測される差し迫った状況だけを想定して決めるものではない。その時の雨量だけの問題ではないのである。

 特に、地元の山の森林、平地を流れる河川の管理を日ごろから十分に行っておかないと、いざという時の対策はうまくいかない。ややもすれば、水の流れを軸にした河川、山林のシステムの管理は中央任せが続いてきた。

 「地方の時代」と言われて久しいが、かつての「ふるさと創生事業」では、観光や流通の改善に資金が投入されてきた。しかし、地元の人々の協力が十分に得られる、防災に関する地域独自の公共事業が必要だ。自然災害はどこでも起きる可能性がある。

 元環境庁長官・愛知和男さんは、著書『次世代の日本へ』の中で地域のあり方について「自由で快適な誇ることができる町作りを、自ら手がけなければならない」として自治体の役割を強調している。