自家製の風力発電で地域の未来を切り開いた…


つかまえた少年」を試写会で見た。原作は世界で大ベストセラーになったウィリアム・カムクワンバ氏の同名ノンフィクション。

 2001年、旱魃(かんばつ)に襲われたアフリカ・マラウイ。農業を営むウィリアム一家も飢饉(ききん)の長期化で窮地に陥る。少年は通学を断念させられるが、図書館で1冊の本に出合い、独学で風力発電の装置を作り上げていく。

 見どころは、14歳の一見無力な少年が、家族や地域の窮状を救いたいと強く願い、解決策を見つけ出す自立心の強さとそのプロセスだ。カムクワンバ氏は後の13年、米誌タイムの「世界を変える30人」に選出された。

 学力について、麗澤大大学院特任教授の高橋史朗氏は以前、講演会で「欧米では人生を切り開き社会参加する力を重視する。人間力、社会人の基礎力と呼ばれるもので、人間的な総合的な力を重視する。その学力と日本のいう学力は、認識が異なるのである」という趣旨のことを話していた。

 この映画の舞台はアフリカだが、やはり「社会参加する力」が重要であることをしっかりと教えてくれる。知識だけでは得られない力だ。

 わが国では昨年4月から全国の小学校で、今春からは中学校で「特別の教科 道徳」が教えられている。ここに「偉人教育」を積極的に取り込む意義は、知育による学力のほかに、もう一つの学力の柱を身に付けさせることだ。