「旅人の如くに汚れ梅雨の蝶」(上野泰)。…


 「旅人の如くに汚れ梅雨の蝶」(上野泰)。梅雨に入ってから、空が曇っていることが多い。そのせいか、初夏の時期といっても肌寒く感じられることがある。実際、薄めの毛布を掛けて寝ていると、朝方に寒くて目が覚めてしまったほど。

 季節的には、チョウチョやトンボ、ハチなどの虫を見掛けてもいいはずだが、都会では花に集うチョウチョの姿もめったに見ない。

 もちろん、花がないわけではない。どこの町内でも、住宅の庭や公園などにさまざまな花が植えてあり、目を楽しませてくれる。梅雨の時期の花であるアジサイも咲き誇っているが、蜜(みつ)を吸う虫の姿はあまり見られない。

 青少年時代に住んでいた地方都市には、虫たちがどこにでもあふれるように飛んでいた。それこそ、花にはハチやチョウチョが引きも切らずやって来て、トンボは頭上を滑空(かっくう)していた。このような情景を思い出すと、少しばかり感傷的になる。

 特にこの時期は、夜空を灯(とも)すホタルの光が乱舞していた。むろん、地方といっても都市部ではあまり見掛けることがなく、郊外に行かなければならなかった。水田が広がった闇の中、ホタルが無数に飛び交っていた。

 しかも、頭上には踊るような天の川の銀河があって、それだけで不思議な世界をさまよっている気がしたことを覚えている。近年、商店街が主催してホタルを人工的に飛ばす祭りも行われているが、満天の星空を背景にしたあの時の風景が懐かしい。