道端や空き地に生えている雑草は注目される…


 道端や空き地に生えている雑草は注目されることがあまりないが、よく見ればそこにも美しい装いがある。これらを探っていけばもう一つの“天体”があることに気付かされる。

 『生け雑草』(柏書房)の著者で、横浜在住の小林南水子(なみこ)さんの趣味は、近所を散歩しながら雑草を眺め、採ってきて、水に生けて写真に撮ること。こうした生活から生まれたのがこの本だ。

 初夏で登場するのはヤブカラシ、ジャノヒゲ、ガクアジサイ、ドクダミ、チガヤ、トクサなど。花入れは魚籠(びく)、須恵器の壺(つぼ)、琺瑯(ほうろう)のボウル、陶器の皿など。素朴だが上品で美しく、生け花の原点を見るような思いがする。

 同じような感動を受けたのは、今月初め、東京・調布市の神代植物公園で開催された東京山草会主催の「春の山草展」だ。会員たちが丹精込めて、しかも岩の器で育てたとあって、山中で見るよりも輝いて見えた。カザグルマ、エゾルリソウ、イタドリ、ナルコユリ、チシマウスユキソウ、アサツキなど。

 山草は都会での栽培が難しい。植えても根付かないからだ。会員に質問すると、種子から育てているとのこと。だが種をまいても芽が出るのは3分の1程度で、3年はかかるという。

 葉挿しや茎挿しもある。同会で行っているのは栽培技術の普及と種子の交換会だ。世界中に愛好家がいて会員は増加しているという。マタイ福音書にあるように、栄華を極めたソロモン王さえ野の花ほど着飾ってはいなかったのだ。