政府は、70代の認知症の人の割合を10年間…


 政府は、70代の認知症の人の割合を10年間で1割減らすとした新たな大綱の素案を発表した。認知症の人数に関する数値目標を定めるのは初めてだ。

 認知症は運動不足、高血圧、喫煙、うつ、社会的孤立などが、リスクを高める要因である可能性が高いとみられるが、実は予防法がまだ確立されていない。従って素案でも対策は、高齢者が地域で交流できる「通いの場」の活用の拡大、教育の場の提供などが挙げられている。

 しかし漠然とした感のある対策では、実効は上がらないのではないか。かつて旧厚生省は「寝たきり老人ゼロ作戦」を展開したが、寝たきりは症状ではないということもあって、この時も実のある手だては取られなかった。

 その結果、寝たきり老人の数は社会の高齢化とともに増え続け、現在約200万人。欧米と比べ人口比で約5倍も多いと言われる。欧米では、脳卒中などになった高齢者を決して寝たきりにさせず、自分で起き、立つことを目標に、リハビリを行って成果を見ている。

 認知症対策で、高齢者の意に沿わないやり方でやれというのではないが、より具体的な方策を取ることが必要だ。今回の大綱に寝たきり老人の解消を付け加えることも提案したい。

 厚生労働省などの推計では2012年時点、認知症の人は65歳以上の高齢者の約7人に1人(約460万人)に上っている。症状が見えにくく、当人がいつの間にか社会的孤立を深めている場合も少なくない。