生物学者の今西錦司(1902~92)はスポーツ…


 生物学者の今西錦司(1902~92)はスポーツ登山のパイオニアで、国内だけでも登った山は1552山に上る。1500山を達成した85年には、メディアにも登場し、人気者となった。

 生物学者としてカバーした範囲は極めて広く、カゲロウの研究から始まり、ヤマメやイワナ、チョウ、日本の森林、内蒙古の草原など、論文や名随筆をたくさん残した。晩年には全体を包括した自然学を提唱。

 京都大で育てた弟子も多く、彼らもたいてい登山の愛好家となった。山では失敗談もある。50年、若葉の季節に南アルプスの本谷山に登り、山菜のオオバギボウシを採取。営林署の留守番の女性に料理してもらって食べた。

 だが激しい吐き気に襲われ、外に出て吐いた。餌をついばんでいた鶏はそれを食べて死んでしまう。食べたのはオオバギボウシではなく、よく似た有毒のバイケイソウだった。

 作家の本田靖春さんが『評伝今西錦司』(山と渓谷社)で書いている。弟子・伊谷純一郎さんの打ち明け話だ。こうした事例は家庭菜園などでもあって、ニラと間違って有毒のスイセンを食べたというケースは2008年~17年の間に47件あり、1人が死亡(小紙5月4日付)。

 イヌサフランをギョウジャニンニクと間違えたケースは12件あり、6人が死亡したという。ニラもギョウジャニンニクも独特の強い匂いがあって判別できそうだが、誤食は起きる。確実に見分けられなければ、食べてはいけないのだ。