小型の観測ロケット「MOMO(モモ)」…


 小型の観測ロケット「MOMO(モモ)」3号機の打ち上げが成功した。日本で民間企業が単独開発したロケットが宇宙空間に達するのは初めて。北海道大樹町のベンチャー企業が手掛けた。

 一般にロケット打ち上げには数十億円かかるが、この企業は自社工場で素材を加工したりして、数千万円まで価格を抑えた。宇宙空間でのさまざまな事業の需要に応えるため、ロケットの開発、量産が進む可能性もあるという。

 ロケット造りをめぐっては今後、大学の理工系への志願者の増加を期待したい。理工系を志望する若者は社会の動向に意外と敏感だ。1960~80年代にものづくりに励む若者を引きつけたのは自動車だった。

 将来、自動車の設計、製造の職に就きたいという学生がどんどん増え、工学部全盛期だった。大学内の実験場は深夜でもよく明かりがついていた。彼らがメーカーの担い手となり、トヨタやホンダを世界に知らしめた。

 しかしその後、排ガスを含む公害問題が取りざたされ、自動車開発の情熱は急速に冷めた。大学の機械、電気工学科の人気低落やわが国の技術立国の陰りもちょうどそのころだった。一方、原子力エネルギーへの不信解消はまだ時間がかかりそうだ。

 だが宇宙開発への国民の関心の高まりは今回の打ち上げでも明らかで、理工系の人気復活のチャンスではなかろうか。重力に逆らってロケットを打ち上げる難しさは相変わらずだが、若い頭脳の挑戦を望みたい。