一昨年の5月、福島県・浜通り地域の東京…


 一昨年の5月、福島県・浜通り地域の東京電力福島第2原発がある楢葉町で、他所からの企業を呼び込むための「ビジネス交流会」があり、取材で出向いた。

 その時、国道6号を通って、同町の観光スポット「道の駅ならは」に立ち寄った。しかし東日本大震災から6年ほど経(た)っていたのに、特産品を置く「物産館」は休館中で、道の駅内にある温泉施設やフードコートも利用できなかった。

 がっかりというより少々驚いた。各地から人々が集まり、地元の人たちの娯楽施設でもある、こういった準公共施設こそ、まずは運営を再開すべきだと思った。ようやく今年4月に道の駅の機能が元通りになる予定だという。

 さて、同町のビジネス交流会には、福島県内外の企業関係者ら約100人が集まり、企業紹介とともに、廃炉やロボット技術関連の新産業創出の拠点となるべき方策などが検討された。こちらはずいぶん意気が上がった。

 地元でディーゼル発電機を製造する創業100年の老舗企業は「2030年、福島で世界規模の再生エネルギー供給事業を展開させる」、いわき市の化学関係の企業は「世界が注目する環境に優しいプラスチックを開発したい」など。

 浜通りの復興はその後、必ずしも順調とは言えないようだ。地場産業と先端技術の新興企業が手を結んで協力し合うことが予想以上に難しい。被災を契機とした産業振興には、今後も山あり谷ありとの覚悟がいる。