スポーツ競技の栄冠をめぐっては、よく勝者…
スポーツ競技の栄冠をめぐっては、よく勝者を称(たた)えて<運も実力のうち>ということが言われる。僅差の勝ち負けだったり、天候が運不運を分けたりする場合などがあるが、この場合は掛け値なしの実力で頂点を極めたと言っていい。
スキージャンプの本場ノルウェーで、ジャンプ男子の個人総合優勝の偉業を達成した小林陵侑(りょうゆう)選手(22、土屋ホーム)である。ワールドカップ始まって以来、これまで39シーズン連続で総合王者を占めた欧州勢以外では史上初となる快挙。
原田雅彦、船木和喜、葛西紀明各選手ら歴代のエースジャンパーでも届かなかった頂点に立ち、スキー史にその名を刻んだのだ。
ジャンプは風など天候に影響されやすい競技だが、総合王者は一発勝負で決まる五輪優勝などとは異なる。主に欧州各地を舞台に4カ月以上にわたり転戦し、28戦の総合成績で決まる。ホームの欧州勢に有利な高い壁を超えるにはタフな精神と体力、そして高い集中力と技術力を常に発揮できる安定した強さが欠かせない。
小林選手は今季、すでに11勝。10日の第23戦で5位となり、総合2位につけていた選手が残りを全勝しても逆転の可能性がなくなった。
5戦を残しての総合優勝という圧勝。2季前のシーズンではフル出場しても、ポイントが得られる30位以内に一度も入れなかったのがウソのようである。一気に頂点に上り詰めた感想を「まだあまり実感できない」と言うのも正直な気持ちだろう。