2016年現在のわが国の女性研究者は13万8400人…
2016年現在のわが国の女性研究者は13万8400人。研究者全体に占める女性の割合は15・3%と、それまでの最高を更新した。主要国と比べると低い水準(米国では13年時点で34・3%)だが、評価すべき数字だ。
日本の女性科学者の草分け的存在で、理論物理学者の米沢富美子氏が亡くなった。80歳だった。京都大大学院修了後、1967年に半導体などの分野で新素材として期待された非晶質(アモルファス)物質の研究で新理論を発表。「静かだが過激な理論」(ノーベル物理学賞受賞者のP・W・アンダーソン氏)と世界的な評価を受けた。
女性科学者に授与される「猿橋賞」を84年に受賞した時、当時教授だった慶大の研究室を訪ねたが、多忙な研究活動の中、インタビューに丁寧に答えてくれた。優雅な装いだったのが印象に残った。
家庭と職場を両立させ、3人の子供を育てたが、その秘訣(ひけつ)を「結婚前、『物理の研究か、家庭か』と悩み、後に夫となった恋人から『両方を取ればいいじゃないの』と言われて重圧感から解放された」と述懐していた。
「本当に自分の好きなことを究めようとする好奇心こそ、科学を志す上で宝となる」とも。数少ない女性の理論物理学者の中で、常に研究の第一線で走り続けた。
95年には女性で初めて日本物理学会の会長に選出された。その研究姿勢や、科学の魅力を訴えた著書などを見て、研究者を志した女性が少なくなかろうことは、想像に難くない。