「コンドルが飛んでいないロッキー山脈なんて…
「コンドルが飛んでいないロッキー山脈なんて私には考えられない」――自然環境悪化で「種の絶滅」が進むことについて、以前話を聞いた元日本動物園水族館協会顧問の故正田陽一氏の感慨だ。
その半面、正田氏は「今でも、寿命を終えて絶えていく生物はたくさんある。『多様性が大事だから』ということで守ろうとしても、決して守り切れるものではない」とも。
昨年、国際自然保護連合(IUCN)が発表した「レッドリスト」によれば、絶滅の恐れが高い野生生物は2万5821種。実際、その一つ一つの種を守る手だてを尽くすことは物理的にも不可能で「人間は自然に対してもっと謙虚、控えめな姿勢をとること」(正田氏)で、自身を厳しく律しなければならない。
ところが、このIUCNの調査対象以外に、水産物つまり貝類や海藻、魚類においても同様の現象が起きていることが明らかになってきた。温暖化や海洋の酸性化が原因だ。
例えば海藻が育つには栄養素となる窒素とリンが必要だが、海水面が暖かくなり、それらの化学物質を含む海底の水が表層に上がって来にくくなっている。まず藻類や酸性化に弱い殻のある貝類の生存が厳しくなるかもしれない。
海中も地上と同じく、循環・有機的な構造が保てなくなると、生物の生息環境はぐんと悪化する。世界海洋機構のリポートに「いずれ漁業資源が半分になると予想される」とある。海中からの人類への警鐘だ。