北海道胆振地方を震源とした今回の地震では…


 北海道胆振地方を震源とした今回の地震では一時、道内のほぼ全世帯に当たる約295万戸で停電する「ブラックアウト」が起きた。2003年、ニューヨークも含む米北東部からカナダ南部をまたがる広い地域で起きたのと同じことが日本でも起きるとは。まさに防災体制の虚を突かれた感がある。

 ブラックアウトが起きる背景には、電力の需給バランスの崩れによる周波数の乱れ、それによる事故を防ぐためのシステムがある。政府はきょう中に停電解消を目指すというが、北海道電力の電力供給体制の完全復旧には最低1週間はかかるという。

 さまざまな分野で電化が進み、電気なくしては生活が不可能な状態になっている。交通機関はもちろん、病院では医療機器が使えなくなる。今回、災害拠点病院は自家発電で対応したというが、長期化すれば入院患者の命に関わってくる。

 北海道の大停電は、165万㌔㍗の発電能力を持ち道内使用電力の約半分を供給する苫東厚真火力発電所が緊急停止したことが原因だ。道内にはそれ以上の発電能力を持つ泊原発(207万㌔㍗)があるが、12年5月以来停止し、再稼働が遅れている。

 この原発停止分も肩代わりしてきた火力発電所を狙い撃ちしたかのように地震が起きた。電力インフラの安全が、いかに重要であるか痛感させられた。

 地震などの災害発生を想定して、発電所の分散や多様化など電力の安全保障体制を再構築する必要がある。