英語は今や世界語。自然科学はもちろん歴史学…
英語は今や世界語。自然科学はもちろん歴史学でも文学でもその傾向は強い。経済史学者の玉木俊明さんは、2009年以降、日本人が国際学会で英語で発表する機会は飛躍的に増えたという(『歴史の見方』)。
中国出身で米国に移住し、英語で小説を書いてヒットを飛ばし続けたケン・リュウさんは、世界の文学賞を総なめにし日本の星雲賞まで受賞。11年から取り組んだのが中国SFの英訳と紹介だ。
彼によって英訳された劉慈欣(リウツーシン)著『三体』はアジア人初、翻訳書としても初のヒューゴー賞長編部門を受賞。この賞は1953年、世界SF大会で創設された最も歴史の古いSF、ファンタジー文学賞だ。
リュウさんの編集で出された『折りたたみ北京』(早川書房)は現代中国SFアンソロジー。「中国の作家の政治的関心が西側の読者の期待するものとおなじだと想像するのは、よく言って傲慢であり、悪く言えば危険なのです」と編者は注意を促す。
「たんに中国だけではなく人類全体について、言葉を発しており、その観点から彼らの作品を理解しようとするほうがはるかに実りの多いアプローチである」と紹介の労をとる。
3作品が掲載された夏笳(シアジア)さんはエッセーで「おそらく西洋の読者もまた中国SFを読むことで、中国の近代化を追体験し、新たな別の未来を想像するきっかけにできるだろう」と語る。中国人が何を考えているのか、報道では伝わらないその一端を示す作品集だ。