国民的な人気漫画「ちびまる子ちゃん」の…
国民的な人気漫画「ちびまる子ちゃん」の作者、さくらももこさんが乳がんで亡くなった。53歳、ファンにとっては急なお別れとなった。平成が間もなく幕を閉じようとする時、一足先に旅立っていった気がする。
小学3年生のまる子はさくらさん自身がモデルで、時代設定は1974(昭和49)年ごろという。出身地の静岡県清水市(現静岡市清水区)の風景も懐かしいが、学校や社会の雰囲気も当然ながら昭和の雰囲気を漂わせている。大人たちはこれに郷愁を感じ、世代を超えた人気を支えた。
ストーリーは、学校や家族の中の日常的な出来事で展開する。小さい頃誰もが体験した、身につまされるようなエピソードが多い。それをほのぼのとしたユーモアで描いた。
登場人物では、父親のひろしはかなりいいかげんな父親として描かれるが、戦後の典型的父親像をデフォルメしたとも言える。クラスメートもそれぞれ個性的だが、確かにこんな感じの子がいたと思わせる。みな身近な存在で、自分の体験と重ね合わせて楽しむことができた。
何より懐かしいのは、3世代が一戸建ての家に住む家族構成だ。まる子の最大の理解者であり味方は、祖父の友蔵である。「ちびまる子ちゃん」は、まる子と友蔵の物語とも言える。
多くの日本人が覚えているあの時代の心、雰囲気を、さくらさんは愉快な漫画の中にとどめてくれた。時がたてばたつほど、その貴重さが身に染みてくるような気がする。