「台風の余波時なしの雨が降る」(星野立子)…


 「台風の余波時なしの雨が降る」(星野立子)。猛暑や熱帯夜、熱中症に悩まされたかと思えば、次は大雨を伴った台風がやって来る。先週は台風20号が四国と近畿を縦断。死者はなかったが、30人ほどが負傷した。

 台風は俳句の季語でもある。稲畑汀子編『ホトトギス新歳時記』では、台風について「太平洋の南西に発生した熱帯低気圧の発達したもので、八月から九月にかけて毎年日本を襲い、烈しい暴風雨をともなう。農作物、人家、交通機関、その他が大きな被害を受ける」とある。

 「猪もともに吹るゝ野分かな」(芭蕉)。この時期の台風を含む風を表す季語も幾つかある。台風ほどではないが、秋の疾風となるのが「野分(のわき)」。野の草を吹き分けるという意味がある。台風の余波で雨が大量に降れば洪水になることもある。それを表現する「秋出水」という季語もある。

 「ローソクの灯に一夜あけ秋出水」(巻野南風)。毎年のことだが、台風の被害には悩まされる。いろいろな対策が施されるが、時にはそれが役に立たない場合もあって、なかなか被害を無くすことができない。

 かつて東京・高田馬場の印刷工場に勤めていた時、付近の神田川が氾濫(はんらん)した光景を思い出す。1階が水浸しになったが、その後、河川工事で氾濫はほとんどなくなった。災害と人間の知恵、工夫の闘いは無くならないが、努力によって被害を最小限に食い止めることはできる。改めて、それを肝に銘じたい。